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理不尽(6)。

  • May 20th, 2011 (Fri) 23:47
  • 家族

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葬祭場から迎えの車が到着し、祖母の亡骸を運び出したのは何時だったでしょう…..。はて、昼食を摂ったのは葬祭場に着く前だったっけ、それとも後だったっけ…..。自宅に居るカミさんに第一報を入れたのは…..? 等々、細かい記憶の時系列が混乱しています。 あるいは二度と思い出されることもなく、そのとき眼前を通り過ぎただけの情景もあるはずです。その全てを克明に思い出すには、既にあまりにも長い時間が経ってしまいました。

そうでなくとも薄暗く、光の加減に偏りのある病室の待合です。厚手の半透明なビニールでもかけられたみたいに、記憶の流れが淀んでいます。ただ、そのなかでも、ひとつだけ鮮明に憶えていることがあります。待合のベンチにボンヤリと座っていたとき、清拭をして下さっていた看護師さんが近付いて来て、祖母の入歯が無いだろうか?と尋ねてきました。できることなら、入れておいてあげたいと言うのです。

その心遣いはとても嬉しいものでした。最初に反応したのは母でした。未明に容態が急変してホームから病院へと移されたわけですから、そもそもここへ持ってきているのか、それともホームに置きっぱなしになっているのかさえ、母にも判らない様子でした。しかし一緒に持ち込まれた手荷物を探していると、その中に納められていたことが判りました。私たちもホッとしましたが、看護師さんも喜んで下さったのでした。

病室に持ち込んだ荷物のうち、衣類やタオルと言った嵩張るものは、看護師さんがまとめてホームの方へ届けてくれることになりました。そのほか、こまごまとしたものは母が整理して袋に詰めていました。

白布に包まれた祖母の亡骸は、ストレッチャーに乗せられて、4階の病室から1階の部屋へとエレベータで移されました。2人ほどの看護師さんが付き添って下さり、私たちはその後を付いて歩きました。小さな病院でしたから、その建物の構造上、他の入院患者や外来の方の眼に触れないわけにはいきませんでした。そのことに、多少の申し訳なさを感じました。また、そんな瞬間に出会わせてしまったことを気の毒にも思いました。

プレートこそ無かったものの、あの場所が霊安室だったのでしょうか。迎えに来て下さった葬祭場の職員は、年の頃なら50代の手前くらい。小柄で華奢な、しかしとても温厚な感じのする男性でした。丁重な挨拶の後、ハッチバックを開けた車の後部に、祖母の亡骸を積み込みました。ストレッチャーのレールの動きが悪かったらしく、一瞬、手間取った様子でしたが、所定の場所に収まって、助手席には父が便乗することになり、母は私の車で移動することになりました。

そうして、お世話になった病院の皆さんに見送られ、葬祭場へと向かったのでした。

(つづく)

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