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理不尽(5)。

  • May 19th, 2011 (Thu) 23:45
  • 家族

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臨終を確認したお医者様は、ただ私達に向かって深々と頭を下げただけで、何も言葉を発することはありませんでした。しかし私は、その無言の会釈の中に、何とも言えぬ思いやりが込められているように感じていました。臨終の前、心拍数の数値を確めた父に応えて「拍動ではなく痙攣に近い状態です」と告げた後、お医者様は「普通はここまで持ちません」と付け加えたのでした。

取りようによっては、手を尽くせなかったことへの言い訳のように聞こえるのかもしれません。しかし、私たちの誰ひとりとして、そのように受け止めたものはいませんでした。満99歳という、長い長い歳月を生き、まさにいま、そのゴールのテープを切ろうとしていた祖母に対して、これ以上の慰めの言葉が他にあるでしょうか。

臨終の後、病室で祖母としばしの名残を惜しんだ後、私たちは看護師さんの求めに応じて、病棟の待合に移ることにしました。葬祭場に遺体を搬送するための段取りを整えなければなりませんでした。

さて、葬祭場に連絡を入れ、搬送のための車を手配したのは父だったでしょうか、それとも私だったでしょうか…..。そのあたりの細かい記憶が、すっかり抜け落ちてしまっています。「いまは全て出払っていて、最寄りの支部から車を回す必要があるから、しばらく待っていて欲しい」というようなことがあった憶えがありますから、あるいは父に代わって私が連絡を入れたのかもしれません。

病院の待合の、愛想のないベンチに腰をかけ、自動販売機の静かな唸りを感じながら、私たちはボンヤリとしていました。ボンヤリとしながらも、この後の段取りのことを考えていました。親戚への連絡、お世話になったホームへの連絡、葬祭場に移ったあと、自宅に戻って必要な喪服や着替えなどを持ってこなければなりません。他県に暮らす弟には、何時の時点で連絡を入れようか…..。母方の祖母の時と同様、今回も彼は死に目に会うことができませんでした。

母は、弟に知らせるのは明日でも良いのではないかと言いました。多忙な身を案じてのことでした。とは言え、コトが定まった以上、あとになればなるほど、彼も身動きが取れなくなるに決まっています。子どもじゃあるまいし、大丈夫だと促したのは私です。ただ、実際に連絡を入れたのは父でした。電話の向こうの彼がどのような反応を示したのか判りません。父は確かめるように、事実だけを丁寧に伝えていたように思います。

(つづく)

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