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続 続 続 似て非なるもの。

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「暗室作業」という「形」を借りて写真家が引き出すのは、フィルムに刻まれた光と影の記憶だけではありません。他の何物にも投影できない、撮り手の心象でもあるのです。それがその写真家に特有のトーンを生み、観る者はそこに心打たれます。ところがいまや、設定ひとつで有名写真家に似た風情の写真が撮れてしまう時代です。しかも、種明かしされなければ、それがフィルムによるものか、それともデジタルによるものか、にわかに区別を付けることは難しい…..。

そのいっぽうで、こんなふうに考えることもできます。結果に大差が無いのなら、そこに至るプロセスは簡便であるほど良い。セーフライトのもとでしか紡げない作家の心象など、所詮は取るに足らない小さなもの…..。『NORTHERN3』を眺めていると、そんな嘲笑が聴こえてきそうな気がします。

しかし、さらにその傍らで、こんなふうにも思います。むしろデジタルに乗り換えたがために、かえって試行錯誤の深みが底無しになった。たとえば撮影枚数が飛躍的に増えたため、最終的な1枚を選ぶに至る道のりが際限なく伸び続ける…..。おまけにアウトプットの工程が銀塩時代と比べものにならないほど省力化したのですから、これまた幾つもの可能性を試すことになり、結局、その作業量自体は昔と何ら遜色なく、ひどい時にはそれを遥かに凌駕してしまう。樹海に木を植えながら歩きまわり、ますます道を見失うのに似ています。

(余談ですが、手書きのガリ版刷りで図表を作っていた世代と、私たちのように膨大なデータ処理を機械でこなしている世代とで、果たしてその「仕事量」に差は有るのか、また、今日のほうが生産性が上がっていると本当に言えるのか、時折ふと立ち止まって考えることがあります。)

話しがいささか横道に逸れました(恥)。

森山さんの『NORTHERN3』と、ここ数巻の『記録』をお持ちの方なら既にお気づきかと思いますが、先にカラーで『記録』に載せ、後にモノクロ変換して『NORTHERN3』に再掲している写真がいくつもあります。それらを見比べていると、「このカラー画像が、このモノクロに化けるのかぁ……」と、曰く言いがたい思いに囚われます。

そこに「うしろめたさ」がつきまとうのは、いわば「森山レイヤー」とでも言えるスクリーン・トーンを、せっせと「重ね着」させているオペレーターを思い浮かべてしまうからでしょうか。先に書いた「設定ひとつで出来てしまう有名写真家に似た風情の写真」を、プロのオペレーターが人力で作っているのです。森山さんが長い時間をかけて築き上げた自身のトーンを、自らデジタルでトレースしようとしているなんて…..。

どこかしら釈然としないものを感じつつも、その傍らでは、ようやく「実用」に耐えるデジタル時代がやって来たとも思えます。GRDIIIの値段もずいぶんと下がっているようですから、ここらでひとつ、付き合ってみる価値はあるのではなかろうか…..。

そんなふうに思っていたときに見た今月号のカメラ雑誌。GXRの広告記事に写る森山さん、その首にぶら下がるGR21は、やはりとっても素敵だったのでした(笑)。

(了)

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Comments:2

2 Funky 11-03-04 (Fri) 10:16

私も、あの広告の同じところに目が行ってしまいました。

でも、難しいですよね。
我々を含め世間一般が思っている森山大道氏の写真のイメージは、本人にしてみれば長い道程の一部分に過ぎなかったのではないかと。

例えばカメラもGRやPENの前後にも色々使っていた訳ですし、今GRDやGXR、E-P2やX100を使うというのも、それが今そこにあるからですよね。

「カメラはなんだっていいんだぜ」(「写真から/写真へ」より)

むしろ本人が仕上がりを「大道風」にトレースしているのは、氏のサービス精神や回りからの期待から来ているのかなとも思ってしまったり。
考え過ぎだとは思いますが…(苦笑

mb 11-03-04 (Fri) 23:04

2 Funkyさん、こんばんは。いつもコメント頂き、ありがとうございます。
やはり、視線が止まりましたか(笑)。一瞬、GXR….?と目の錯覚を疑ったのですが、どこからどう見ても、見慣れたファインダーと明かり取り窓がそこにあり、ならばそのレンズの出っ張りは具合は疑いもなくGR21…..(笑)。

たぶん、2 Funkyさんのおっしゃるとおりかと思います。人伝に聞くところでは、周囲への気遣いを絶やさない、本当に優しい方だということですから…..。
ただ、そのいっぽうで、実はカメラに対する要求水準は極めて高く、また厳しい目をもった御方だと伺ったこともあります。ですから決して「なんでも良い」というワケでは無いそうです。裏返すとGRDIII、GX200、GXRも、全て森山さんの要求をキッチリと満たしているのかな….と。

ただ、やはり私はあの「白太縁取りハレーション」がどうにも好きになれなくて、なので、森山さんの首からぶら下がっているGR21が、やはりとっても素敵に思えたのでした(笑)。

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