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続 夜歩く。

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そうして夜が明け初めるまで、とにかく話し続けました。2人してNHKのニュースにチャンネルを合わせていました。空撮のヘリコプターが、横転した高速道路の高架を映したとき、あるいは神戸市街に幾筋も立ち上る黒煙を映したとき、そして宮田アナウンサーが「これ、生田神社ですか….?!」と絶句したとき…..。繋がった電話線が何ら友人を助けてくれないことを思い知るばかりでした。それでも切ることはできませんでした。

ようやくのこと、いったん切らざるを得なかったのは、私も友人も仕事に出かけなければならなかったからです。その日一日をどのように過ごしたのか、いまではすっかり忘れてしまいました。

……と、そんなことを、とつおいつ思い出しながら、昨年はまだ14インチのブラウン管だったテレビの中に、夜の神戸の街を歩く2人を眺めていました。なんだか、とても不可思議な錯覚…..私自身はここでこうして炬燵の中に入っているのに、冴え冴えとしたタングステン光に照らされて、行き交う人も無く、そこだけが奇妙に明るい商店街を、彼らと一緒に歩いているかのような錯覚に、心地良く満たされていたのでした。

そんなふうに意味も無く、幾度夜の街を歩いたことだろう…..。たとえばそれはアルバイトの帰り道でした。あるいはそれは友人と明け方近くまで飲み歩いていた日の夜でした。酔い覚ましに公園の真ん中に立つ大樹の傍らに寝そべっていて、二人連れのお巡りさんに声をかけられたこともあるくらいです。

そして、あるいはそれは独り身の昼夜逆転の生活に居たたまれず、午前零時とともに布団から跳ね起きて、さながら安部公房の『薄明の彷徨』のように、あるいは『夢の逃亡』のように、あるいは『名もなき夜のために』を追憶するために、ひたすら意味も無く歩き回るしか無い狂気に満たされていた頃の、とてつもなく甘美で苦い日々の記憶なのでした。

そうしてふと気がつくと、すべての喜怒哀楽に抗しきれず、私はとめどなく涙をこぼしていたのでした。

(つづく)

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