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母屋にて(4)。

  • September 1st, 2010 (Wed) 21:21
  • 家族

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新しい職場での私の前任者は、昨年度末をもって定年退職された方でした。引き継ぎの際にお目にかかったくらいで、あまり多くの接点はありませんでした。しかし、私のような新参者にも細やかに気配りをして下さり、なにより温厚なお顔を見ているだけで、その優しいお人柄が伝わってくる方でした。一緒にお仕事が出来ていれば、私ももっと成長できたろうに…..と思うと、巡り合わせとは言え、入れ違いになってしまうことがなんとも残念で仕方ありませんでした。

その方とともに長く仕事をしていた、もう一人の先輩同僚がいます。たしか5月の連休の明けた、ある夕方のことでした。「すこしは慣れたかい?」と私を気遣って、わざわざ話しに来て下さったのでした。そしてこの職場のあれやこれやを、時折愚痴も交えつつ、しかし決して嫌味にならない口調で、面白おかしく聞かせてくれたのでした。

自然、話は私と入れ違いに退職された、件の前任者のことに及びました。聞けばその方は一昨年、奥様を病気で亡くされたということでした。長く入院をしておられたらしく、その前任者は仕事が終わると病院に向かい、看病をしてから自宅に戻るという生活を続けておられたということです。ご主人の定年を待たずして、旅立ってしまわれたのでした。

その様子を間近で見ていた先輩同僚は、少しでも元気づけてあげようと、昼食や夕食に、あるいは時として飲みに誘い出し、何かと話を聞く機会を作ったそうです。しかし「自分の前で、人目もはばからず、奥さんのことを思ってポロポロと涙を流されるんよ」と、そのことが何よりも辛かったと言うのです。

奥様を見送ったあと、ご自分の定年を迎えられたわけです。その時、ご本人は実家のある大分に帰って、独り暮らしをするつもりでおられたそうです。一人息子さんは福岡で所帯を持っているが、いずれ身体の自由が利かなくなれば嫌でも厄介をかけるに決まっている、だから、それまでは行けるところまで独りで暮らしてみるつもりだ…..そうおっしゃっていたそうです。

ところが、その話を聞いた先輩同僚は、まったく逆の提案をしたのだそうです。つまり、元気なときにこそ同居すべきだ、と。そうしないと、息子夫婦に対しても、そして孫に対しても、自分が弱っている姿しか、記憶に残せなくなってしまいますよ…..と。

(つづく)

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