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物を撮った写真。

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あまりにも当たり前すぎて、何だか書くのも気恥ずかしいのですが…..いまの私たちは身の周りに夥しい数の写真をちりばめて暮らしています。新聞紙や折込広告の写真、雑誌の写真、通販のカタログ、単行本や文庫本の表紙、フォトフレームに入れた家族の写真、もしかすると、額装したお気に入りの作家のヴィンテージプリント、あるいは粗品でもらったカレンダーの風景写真…..。このうえ「写真が趣味」とは、いったい如何なる狂気の沙汰か…..?と言えなくもありません(苦笑)。

ことほど左様に写真にまみれて暮らしているわけです。ごく一般的な暮らしの中に在る写真たち…..仮にそれらを「人物写真」「スナップ写真」「風景写真」等々のカテゴリーに分類したら、いったいどれが一番高い比率を占めることになるのでしょう…..?

もちろん、人によって暮らしぶりが違いますし、写真一点をどのように勘定するか?も案外難しい問題ですから、この問い自体、そもそも意味を成さないかもしれません。しかしこの消費社会に暮らしている以上、私たちが日々否応なく接しているのは、おそらくその圧倒的な生産量から言っても、カタログ雑誌等に典型的な、いわゆる「ブツ撮り写真」がもっとも多いのでは無かろうか…..と思えます。

実は私、数ある写真集の中でも、「物を撮った写真」を、何かひとつのコンセプトのもとに編んだ写真集に対して、ほとんど無能とも思えるくらい、そこに感応できる資質に欠けています。被写体は縄文土器でもなんでも良いのですが(「ほらほら、たとえばこんな写真集ですよ!!」と例示することさえできないくらいです)、ひたすら「モノ」だけを撮った写真集には、まるで歯が立たず、2〜3頁をめくっただけで、書店の本棚へとおとなしく退散願うのでした。

しかし、そんな私でも、ずっと気になっていた写真集があります。2008年4月に刊行された、石内都さんの『ひろしま』(集英社)です。

この写真集を知ったのは刊行間もない頃のことでした。青地に小さな花柄をあしらい、胸元に五つ、まとまって並んでいる真紅の小さなボタンがとても印象的なワンピースがあります。一目見て、美しいと思いました。この写真のことだけでも、この本を手元に置いておきたいと思いました。しかし何かが私を押し戻し、この写真集から遠ざけてしまいました。

ようやく手に入れられたのは今月の初めのことです。どうして吹っ切れたのかは解りません。この写真集の背後には、厳然と「原爆」という事実があります。果たしてこの「原爆」という文脈を除いてなお、この写真集を手にした私の心が動くのかどうか、まるで自信が無かったのです。

しかし刊行からおよそ2年以上の時間を経て、再び手にとった『ひろしま』は、そしてあの花柄のワンピースは、やはり私に響いてきたのです。「原爆」という文脈が私の脳裏から消えたわけでも、逆によりいっそう強く心に迫ったわけでもありません。虚心に眺めたとき、やはりこの花柄のワンピースの写真を手元に置いておきたいと願ったのでした。

明日は8月6日です。

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