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全駅停車。

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未だ幼稚園に上がる前のことです。週末ともなると、母親に連れられて、母方の実家に戻っていました。別段、家庭に不和があったわけではなく、純粋に戻らざるをえない事情を抱えてのことでした。昭和40年代の半ばのことです。最近、光文社文庫から復刊された森山さんの『遠野物語』の中に、二人掛けの座席に仰向けで寝ている男の子の写真がありますが、まるで当時の自分を見るような気がします。

ほぼ毎週、そんな生活が続いていました。もちろん、新幹線ではなく、鈍行で往き来するのです。母方の祖父によると「日本でいちばん国鉄を利用した幼児」と言われるほどだったそうです。その記憶は断片的ですが、いまでも明確に憶えている光景があります。

往きは席を確保するのも難しいくらいの混雑です。そうして大都市の中核的な駅をいくつか潜り抜け、次第に車内に余裕ができた頃、進行方向の左手に海が広がり、何の変哲もなく退屈な景色が続きます。大きな川、剥いだ牛革を干している河川敷、レンガ作りの塔が林立する街、そして何時終わるともなく、次から次へと現れるトンネルたち…..。

やがて乗換のための駅に着き、時間帯によってはそこで蕎麦を食べることもありました。ここまでは快速列車で行けるのですが、この駅から後はひたすら各駅停車の普通列車しかありません。到着まであといくつ…..などと子ども心に数えながら、とてつもなく退屈な時間を過ごすのです。

兎にも角にも、子どもの私にとって良い思い出は何ひとつありませんでした。当時の私に本を読む習慣があるわけでなし、ましてやゲーム機などない時代です。いったい、どんな具合にその退屈な時間を堪らえていたのか、今度実家に帰った折に、母に訊いてみようと思っているのです。

(つづく)

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