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位置関係。

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子どもの頃…..なけなしの小遣いをはたいて手に入れたものならば、それこそ枕元に置いて夜を明かしてしまうほどに嬉しく、細部に到るまで弄り回しては、その感触を身体の中に刻み込んでいたものです。これがLPやCDであったなら、どんな音も聴き逃すまいとして、音の粒立ちはもとより、そのノイズに至るまで、ひたすら注意を傾けて聴いていたはずでした。

そんな時間と気持ちのゆとりを持てなくなってから、いったいどれくらいの時間が過ぎていることでしょう。「大人買い」の弊害は、取り敢えず手に入れてしまうことで欲を満たした気になってしまうことにあります。ロクに愉しみもせず、そしてそのモノを深く理解したり、愛着を抱いたりすることもなく、むしろ手に入れた端から、早や次が欲しくなっているのです。

そんなサイクルを繰り返せば繰り返すほど、欲望とそれを実現するまでの境目はますます滲んでしまいます。いともたやすく跨いでしまえるのです。しかしそのいっぽうで、深く満足するための閾値の方は、際限なく上がってしまい、もはや少々の刺激では、到底満たされることがありません。それどころか、欲望が満たされた途端に不満を抱え始めるという、まったくもって不可解な病気に罹患していたことに気が付くのです。

そんな反省から、ここのところはCDを購うことを控えてます。そして、今までに手に入れたものをじっくり時間をかけて聴きなおそうとしています。単に音を流すだけではなく、その波にもぐりこむこと、そして出来れば個々の楽曲に関する知識を、他の文献から仕入れたりしようと努めています。

で、最近のお気に入りが、BWV1014-1019。J.S.Bachによる「ヴァイオリンとクラヴィーアのためのソナタ」(全6曲)です。私が持っているのは、かつてSony Classicalが刊行した”The Glenn Gould Edition”のNo.32です。ヴァイオリンはハイメ・ラレード。1975〜1976年にかけて録音されたものです。

第4番ハ短調(BWV1017)の第1楽章が、マタイ受難曲のアリア、Erbarme Dich, Mein Gottとほぼ同じフレーズを使っているとか、第6番ト長調の第三楽章だけが、何故にクラヴィーアのソロ曲として書かれたのか?とか、そのつもりになってみると、とてつもない謎の塊を前にしていることが判ります。

個々の曲はもとより、その中の楽章やそこで使われたフレーズが、別のどの曲に転用されているものか….等々、その位置関係を知ることはとてつもなく困難で、しかしそれだけに魅力的な営みに思えます。かつて、子どもの頃、いくらでも時間に余裕があり、しかも「大人買い」とは無縁に過ごしていた頃なら、あるいはその知識はとてつもなく蓄積されていたのかも知れません。

もうすこしはやく、Gouldに出会っていれば良かったなぁ…..と思わずにはいられないのでした(苦笑)。

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