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悲歌の交響曲。

  • June 8th, 2010 (Tue) 19:26
  • 音楽

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ラジオから不意に流れてきたその曲の、名前も判らぬままに時間だけが過ぎ行きてしまうことがあります。とどめようもなく、そのメロディは記憶からかき消えてしまいます。忘れないようにと、懸命にその一節だけを反芻しても、たとえば電話の呼鈴が鳴っただけで、戸外から救急車のサイレンが響いただけで、あるいはほんの少し、意志に反して頭が別のことを考えたその刹那、一瞬にして手の届かぬ霧の向こうに消えてしまうのです。

たとえばそれは、映画『シンドラーのリスト』のテーマ曲でした。これほど有名な映画を、しかも未だに観ていないことがバレてしまいますね。しかし、長らく私は、この映画とテーマ音楽とが結びついていませんでした。

何か別の番組…..特にドキュメンタリー等でこの曲が使われていると、悲しみを背負い尽くしたかのようなメロディに、思わず心が奪われていました。しかし、その曲が何であるのか、手がかりさえありません。ようやく結びついてくれたのは、ほんの先月末のこと…..インターネットラジオのWKARのおかげでした。

あるいは、間違いなく、かつて聴いたことがあるはずなのに、そのことはすっかり忘れていて、欠片(かけら)ほどにも満たないくらい、あるいは痕跡とさえも言えないほどの大きさで、長らく心の奥底に潜んでいた曲もあります。市川森一作、三枝健起演出のドラマ『もどり橋』(NHK)のテーマ曲です。作曲は三枝成章(成彰)さんです。

(余談ですが、女優の樋口可南子さんを「白戸家のお母さん」や「一眼あそばせ」でしかご存知ない方は、本当に気の毒だと思います。『風神の門』や『もどり橋』を観れば、その愛らしさと哀しさと美しさに心打たれることでしょう。『もどり橋』など、私は本当に主人公の男の子に感情移入してしまいましたもの。その光景は、いまでも夢に観るくらいです。あのドラマが喚起する情緒は、この日本では既に過去のものになってしまったのでしょうか…..? ところで、かつて私は、あの幽霊ホテルのある市の南に暮らしていたのでした)

どちらのメロディも、どこまでも穏やかで、切なくて優しくて、そしてたゆたうように流れています。しかし聴いている心の内は、止めようもなく、子どものように泣きじゃくっているのです。「大人」という衣装を身ぐるみ剥がされ、独りぼっちにされた子どものようです。いったい、何に対して涙がとまらないのでしょう? それはたぶん、ほんのいっとき、流れ行く「時間」が見えてしまうからかもしれません。

掬い上げた水が、どうしようもなく掌の隙間からこぼれ落ちるのを、なにもできずにただ泣きじゃくりながら見ているのです。現在が絶えず過去へと変わりつつあることを目の当たりに突きつけられるのです。その焦りと恐怖に、ただ打ち震えるしかないのです。そうして泣きじゃくることで、せめてもの抵抗を試みるのです。しかし、私をそんな心地にさせたメロディこそが、私を癒してもくれるのでした。

そして今日、もうひとつの曲が、私の中でようやく言葉と結びついてくれました。ヘンリク・グレツキの『悲歌の交響曲』…..。

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Comments:2

M.Niijima 10-06-08 (Tue) 23:50

横浜には「ベリーニの丘」(ググってみてください)なる施設がございまして、其処の中央、人工池上でコンテンポラリーダンスの公演が行なわれたことがありました。
月が浮かぶ夜空を背景にソロダンサーによって踊られたクライマックスのシーンにて「悲歌のシンフォニー、第1楽章」がかけられたときの感動は生涯忘れられない思い出になるでしょう。
ちょうどジンマン指揮、ロンドン・シンフォニエッタのCDがビッグ・セールスを記録していた直後のことでしたから、もう十数年前のことになります。

mb 10-06-09 (Wed) 0:03

M.Niijimaさん、こんばんは。遅くまでお仕事ですか? お身体を大切になさって下さい。
貴重な情報をありがとうございました。この『悲歌の交響曲』を野外の月夜で、しかもソロダンサーの舞踏とは、心揺さぶられぬ方が嘘になりますね。本当にうらやましい。
この記事を書いたあと、ジンマン指揮のCDをポチったとこでした(笑)。かなり売れたCDのようですね。楽しみです。
併せて、武久源造さんによる『アンサンブル音楽の領域vol.3 バッハの宮廷音楽』もポチりました。こちらはジルバーマン・ピアノによる「音楽の捧げもの」を収録しています。先週の『気まクラ』の影響か、発送までに2週間ほどかかりそうです(泣)
すこしずつ、本当にすこしずつですが、いろんな音楽と曲名とが繋がりつつあります。こればかりは、足で探してもどうしようも無いことなので、ひたすらラジオで網をかけるしかありません(苦笑)。

ところで、『もどり橋』も、よろしければググッてみて下さい(謎)。

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