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現物至上主義(11)。

  • January 25th, 2010 (Mon) 23:32
  • 思惟

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さて、ここまで書いてきて、電子書籍化時代の「出版社」という「仲介業」が、この先、いったいどんな具合に成立しうるのかを考えてみたいと思っていました。作者と作品とを「発掘」し、実際のクオリティはどうあれ、その「価値」をオーソライズし、それを「文化」と称して売り捌く…..。電子書籍の時代になっても、大なり小なり、そうした「仲介業」は残っていくように思えます。

問題はその「残り方」です。

結果として異質な何かをもたらす可能性を秘めているとは言え、当面は、紙媒体の書籍を扱うのと同様の論理で、「電子書籍の流通システム」が電脳空間に再現されるだけのような気がします。もちろん、紙媒体を扱っていた時代の、物理的な「製作」と「運搬」と「流通(書籍の棚幅の陣取りゲーム)」の過程が無くなるわけですから、相当に発想の転換を強いられることは確かです。

しかし、そうした「贅肉」を削ぎ落としたとき、果たして「出版社」の「出版社」たる所以が何であり、その存在理由が何によって担保されていたのか、改めて考えざるを得ないのです。偶然なことに、ここ数日の間、電子書籍時代の「出版」という営みに対して、立て続けに興味深い論考に触れることになりました。いずれの論考もが共通に抱えていたのは、その作家や作品の質を、誰が、どのように正当化し、権威を付与するのか(あるいは「付与し得るのか?」)という問いでした。

同じようなことを、私も考えないでは無かったのですが、しかし同時に、私はその「問い」自体にある種の「異和感」も覚えていました。そもそも「問い」として座りが悪い(笑)。この「問い」そのものに、ある種の「限界」が織り込み済みのような気もしていました。

その異和感や限界が何なのか、しばらく判りませんでした。もちろん、いまでも霧が晴れたわけでは無いのですが、それはどうやら(これらの論考の著者に、その自覚が有るか無いかは別として)、所詮「売り手」や「作り手」の立場に偏った「問い」…..そこからしか想定しえない「読者像」の貧困から来る異和感では無かろうか…..と思ったのです。

つまり彼らにとって「読者」とは、作品との出会いを様々に演出・粉飾してくれる「価値」や「権威」を欲している存在であって、そのニーズに応える「価値」や「権威」を統制する「ラベル生成装置」としての「機能」は、もっぱら「消費する側の必要」から生み出されるに違いない…..。いささか入り組んだ表現をすれば、こうしたことが「作り手」や「売る側」による「読者像」として、身動きが取れないほど固まっているのでは無かろうか……と。

特定作家の作品が、特定出版社と提携関係にある特定の電子書店からしか入手できないという仕組みは、むしろ電子書籍の時代だからこそ、いともたやすく出来上がってしまうような気がします。そうなれば、何のことはない、「紙媒体の書籍時代」以上に不自由で窮屈な状況が生まれるのです。

しかし、電子書籍時代の職業作家がその作品によって収入を得ようとすれば、権威ある出版社のサーバーに自分の作品を置いてもらえるよう、一定の囲い込み競争に参戦し、勝ち残って行かなければなりません。そしてなにより読者の側が、そうした「勝ち残り組」に「作家」の称号を与えているのです。挙句の果てに、いまやそうしたサイクルが繰り返されることに、すっかり飽きてしまっているのです。

しかし、それだけが「読者」であるはずがありません。

電子書籍…..テクノロジーによって個人が自由に出版(発表)できるはずの時代に、相変わらず権威付けられた何かが幅を効かせている事例には、枚挙にいとまがありません。新聞然り、雑誌然り、メディア然りです。その延長で考えれば、電子書籍だけがその轍を踏むことなく、ことさら特別な「楽園」を保証されるとは考えにくい。ここで言う「楽園」とは、集権的な価値付与に依らず、書き手と読み手とが自由に交流し、そのなかで互いの育ち合いが果たされる場所のことです。

これが実現しないのは、そもそも「売り手」や「作り手」の描く「読者像」の貧困にありはしないだろうか…..。もちろん、これに代わる読者像を私が描けるわけではありません。また、電脳空間さえあれば、それだけで書き手と読み手が自由に交われるとも思いません。

しかしいずれにせよ、電子書籍によって「出版」という営みのありようが、大きく再考を迫られているのです。折角の機会なのですから、そうであれば、その流通の問題以上に、「読者」の「読者」たる所以をどう考えるかという問いを共有したい気がするのです。

(つづく)

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