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続 電子書籍。

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決定的に知識や情報が不足していると、かえって想像は逞しくなるものです。そうして膨らんだ「知りたい」という欲望を満たさんがために、現物に辿り着くまでの距離をもっぱら文字情報で埋め合わせようとします。しかしそうした回り道こそが、期待と妄想に実体を与え、「知る」ことよりも「理解する(もしくは識る)」ことへの基礎体力を育んでくれる気がします。

そしてその基礎体力の中には、もしかすると対象に対する謙虚ささえ、織り込まれているかも知れません。

しかるに今日のように、単語レベルの検索であっという間に「≒現物」に辿り着けてしまう時代だと、思考を発酵させるどころか、想像を逞しくする余裕さえ持たせてもらえません。それはとてつもなく不幸なことのように思えます。味わうべき対象を、単なる「情報」として、さしたるひっかかりも無いままに消費しそうになるからです。

Web検索によって近似値的に正しい回答を引き出せても、それは対象を味わったり、対象に心を揺り動かされたり、対象をより深く理解したり、自分の思考が深まったり鍛えられたりすることとは、一切関係が無いと思えたのです。そんなことをとつおいつ考えていたある日の朝、NHKが報じたのは、アメリカで電子書籍端末が流行しているというニュースでした。

主に取り上げていたのは、AmazonのKindleと、Barnes & NobleのNookでした(その他のEブックリーダーのスペック比較表はこちら)。どちらも着実に売り上げを伸ばしているようです。本格的な電子書籍時代の幕開けとも、また、出版不況に喘ぐ業界の中で唯一明るい話題だとも言われているようです。

今のところの「売り」は、実際の書籍に比べて1冊あたりの単価が安いこと、無線通信機能を使って数多くの書籍をダウンロードできること、気になる箇所にマーキングができること等のようです。Kindleなど、つい最近のファームウェアのアップデートで、日本語PDFの表示も可能になったようですね(詳細はこちら)。

何とも不思議な気がします。ひとつは、音声や画像や動画よりも遙かにデジタル化になじみやすいと思えた「テキスト(書籍)」が、ここに至ってようやく本格的な利用に堪えうる電子化への歩みをはじめたように見えることです。もうひとつの不思議は、さして洗練されているとも思えぬこれらのデバイスに対して、人々の関心がとても高いようだと言うことです。

前の「比較表」を見たところ、多くのデバイスに辞書機能が付いているようです。どんな具合に動作するのか判りませんが、ネット経由でWikipediaやYouTubeを呼び出したりする類のものでは無く、機器本体に埋め込まれた辞書アプリを別窓で開く程度のもののようですね。

こうなると、書き手は専門的な用語に対して、それを説明したり解説したりすることなく、ある意味で不親切に書き進めることができるかも知れません。「判らなければ自分で調べて下さい」が前提になります。ただ、読み手の学習行動を促すかに見えるこうした仕様も、それが「学習」にまで深められると良いのですが、実態は「調べさせる」という「作業」を強いることにしかならないような気もします。

否、「作業」に堕してしまうのは、「調べる」という行為がお手軽にできてしまうからかも知れません。

近未来を描いた映画や小説が予見したように、少しでも判らない単語があったとき、当該の単語を範囲指定すれば、たちどころにその意味はおろか、それに該当する画像や動画が再生される…..そんなデバイスが登場する日も近いのでしょうか? たとえば文中の「植木等」をクリックすると、別の小窓でスーダラ節を歌う植木さんの映像が再生されるとか…..。

面白そうな気もしますが、そんな「即時性」はかえって邪魔な気もします(笑)。ただ今後、AppleがタブレットPCの市場に割り込むことがあるとすれば、ここまで革新的なデバイスに作り込んで登場させるのではなかろうか…..。そうなると、すこし心が揺れるかも…..あ、もしかするとiPhoneってのは、既にそうしたデバイスなのかも知れませんね。

(了)

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Comments:3

2 Funky 09-12-11 (Fri) 19:02

その昔、Appleで「Knowledge Navigator」というコンセプトモデルがありましたが、それに近い事が出来るような世の中になりましたね。

仰る通り、iPhoneは「即時性」の高い製品です。インターネットと現実をシームレスかつリアルタイムに繋いでくれますから、こちらに書かれている事はほぼ出来ます。それだけ「ネットに繋がれて(束縛されて)いる」面もありますね。

自分で想像したいがために、あえてそれらの機器から離れなければならない時代になったのですかね。。。

hiro 09-12-11 (Fri) 20:16

私が念を押すようなことではありませんが、はい! と…iPhoneから(笑) もう年の瀬ですね。来年また、今春のデジャヴュ に巡り合えますように!

mb 09-12-12 (Sat) 21:43

>2 Funkyさん
“Knowledge Navigator”のこと、初めて知りました。Appleの全ての製品が、この”Knowledge Navigator”へと至る過渡的な製品と位置づけられていたとか…..。80年代の後半、個人向けの「コンピュータ」が「商品」として普及し始めた時代の、夢に充ち溢れた話しですね。
しかし今や、それが現実に手に届く範囲に…..否、部分的にはすでに実現している。「アナログ」の時代に育ち、その後、デジタルの恩恵をふんだんに受けている私には、どうしようも無く、この橋を渡り切ることができないのでした。

>自分で想像したいがために、あえてそれらの機器から離れなけ
>ればならない時代になったのですかね

まさしく、おっしゃるとおりですね。パソコンの電源を入れずに過ごす日が必要です(苦笑)。

>hiroさん
SBMがキャンペーンをしていることを知りました。しかし、やはり踏み切れず…..というよりも、不思議なくらい(本当に、自分でも不思議なくらい)、食指が動かないのです(笑)。
そしてこの記事を書いた直後、なんともタイムリーに発表されたこの↓記事に、その正体が明るみになるまで、もうしばらく待ってみるつもりなのでした(笑)。

http://www.computerworld.jp/topics/apple/169989.html

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