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吸入式(2)。

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ペン先とペン芯を取り外して判ったのは、ペン先の裏側にベッタリとインキがこびりついていることでした。もちろん、その粘着の度合いはインキによって異なるのでしょうが、それにしても想像以上のことでした。なるほど、こんな具合にインキが固着し、ペン芯の毛管を塞いでしまうのなら、どれほど毎日使おうが、定期的なメンテナンスを促されるのも無理はない…..。改めてメンテの必要を思い知ったのでした。

すると、にわかに他のペンも気になりはじめました。さすがに丸善のセンチュリーをバラす勇気は持てませんでしたが、安価に購い、その後、セーラーのプロフィットのペン先に付け替えてもらった、カトウセイサクショカンパニーのセルロイド万年筆や、そのほかの万年筆でも、さっそくペン先を取り外してみることにしたのでした。

PGを含めて、都合3本の万年筆で試してみましたが、いずれも壊すことなく分解・清掃・再組み上げをすることが出来ました。なかでも驚いたのは、あれほど不調だったPGが、素人仕事の私の手によって、生まれ変わったように元の書き味を取り戻してくれたことでした。この爽快感は、首軸をガラスコップの水に3日間浸けたところで得られるものでは有りません。

そうして私は、いつもお世話になっている店主の奥様の言葉を思い出していました。万年筆が筆記具の中心であった時代には、誰もが自分で分解・清掃し、ペン先を調整して使っていたのだ、ということを…..。もちろん、中には失敗して壊してしまう人もいたことでしょうし、手慣れた素人でも、なにかの拍子におシャカにすることもあったでしょう。なにより、手先の器用さは千差万別です。

しかし、言われてみれば、「実用に堪える筆記具」が「万年筆」に他ならない時代なら、いちいち専門家の手を煩わさずとも、自らの手で治しながら使うことが、ごくごく自然な習慣として身体にしみついていたのかも知れません。しかし、安価でメンテナンス・フリーのボールペンの登場のおかげで、「治して使う」習慣は、私たちの身体から完全に消え去ってしまいました。そうして「万年筆」に必要以上の特権的地位を与えてしまったのかも知れません。

そう言えば、今からおよそ20年前、学生時代の私の恩師は、万年筆しか使っていませんでした。むろん、趣味などであろうはずが無く、それは恩師の執筆活動を支える実用品であり、それ以上でも以下でもありませんでした。「書き味が悪くなった」と言って、自らペン先をいじっていたことを思い出しました。いま考えると、それは決して特別なことでは無かったのです。

いまの時代に喩えて言えば、Mighty Mouseのトラックボールとその駆動部にこびりついたゴミを、自分で分解・清掃するようなものだったのかも知れません。

(つづく)

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