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続 二巻本。

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どうやら、子どもの風邪が伝染ったみたいです。熱発もなく咳も出ず、ましてや寝込むほどでも無いのですが、鼻詰まりで喉が痛く、妙な肩凝りに見舞われています。普通なら平気な顔で乗り切るべきところですが、こうした諸症状に対して耐性の無い私。快晴の陽光とは裏腹の、情けない気分に凹み気味です。こうして書くことが、多少なりとも元気の素になってくれれば…..(苦笑)。

さて、一昨昨日(「さきおととい」を変換すると、こんな漢字になるんですね)、楽しみにしていた宮本常一の二巻本『宮本常一が撮った昭和の情景』(毎日新聞社)の上下巻が届きました。hiroさんに頂いたコメントへの返信にも書いたのですが、4年前に刊行された『宮本常一 写真・日記集成』の「縮刷版」という私の書き方は、少し訂正しなければなりません。

いやぁ…..すごいです。たしかに底本は『宮本常一 写真・日記集成』なのですが、収録の写真点数は(若干数とは言え)これを上回るそうです。上巻約400点、下巻約450点。完全編年体と言うか、昭和30年〜昭和55年まで、宮本が撮った写真を1年ごとに括り、時系列で並べています。約四半世紀の足跡を順に通覧できるわけです。

ひとつひとつの写真には、編者によるキャプションと、その写真に近いと思しき宮本の著作からの引用が付されています。なにより秀逸なのは、そのプリントのクオリティでしょうか。むろん、宮本が自分で焼き付けたものの転載ではありません。底本となった『宮本常一 写真・日記集成』を作成するさい、新たにネガから焼き付けたものだということです。

私のような素人からみても、とても繊細な調整が施されたプリントのように思えます。相当のご苦労があったことは疑い有りません。しかもそのトーンは「芸術」に傾くでもなく、また平板な記録写真にとどまるでもなく、その2つを極とした真ん中の道をしっかりと示しているように思えます。輝くような黒のしまりが美しく、それを見ているだけでも幸せな心地になります。

繰り返し、繰り返し眺めていると、改めて宮本の写真が好きなんだなぁ…..ということを思い知らされます。それはつまり、「宮本のような写真を撮りたい」という思いでもありますが、それ以上に「宮本のように写真を撮りたい」という思いでもあります。シャッターを切った端から過去に成り行く写真ですが、その蓄積こそ、その時、その瞬間の事実であり記録です。その宮本の、分け隔て無い視線は、やはり観る者の心を打たずにはおきません。できることなら、その写真の中に分け入りたい衝動に駆られるのです。

底本を見ていた時には気が付かなかった写真がありました。私の母方の実家にほど近い、国鉄の駅を写した1枚です。私が生まれるよりも前の写真ですし、なによりその写真に対応する記憶は私の中には無いのですが、祖母や母が行き来した駅舎を宮本が納めていたことは、私に特別な感慨を起こすのでした。

う〜ん、これなら二巻本に終わらせずに、ぜひとも続刊を期待したいなぁ…..と思っていたところ、とんでもない「発見」をしてしまいました。この二巻本のキャプションの多くは、既に絶版となっている宮本の『私の日本地図』(同友館)からの引用が多いのですが、それが現在、未来社から復刊されているらしいのです。

この『私の日本地図』、1967年から76年、つまり宮本の生前に刊行された全15巻の大作です。刊行当時の現物を見たことはありませんが、1頁に1枚の写真が付され、それにまつわる話を宮本自身が執筆しているそうなのです。ながらく絶版となっていたものを、未来社が復刊、昨年、第1回配本として3冊が刊行されたようなのです。

最寄りの書店のHPで在庫を確認したところ、そのうちの2冊があるようなのです。嬉しくて、涙が出そうなのです(いろんな意味で)。

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Comments:2

hiro 09-06-19 (Fri) 19:14

私のところへも届きました!!凄く面白いですね。文字量はちょうどでした(恥)。ザッと眺めると、写真表現は皆無、生真面目でひたすらに記録に徹していると僕は感じました。どの写真もマクロ視的で日の丸、何を撮ろうとしたのか一目瞭然。数歩下がれば入る屋根を、微妙にちょん切れる位置で何件も写し、屋根に興味がないのだろうか…、どうして綺麗に収めようとは思わないんだろう?そんな事よりも代え難い興味がこの写真の中に在るのだろう…など考えました。巻末に至ると大御所の写真家達が恭しくコメント。mbさんのコメントを拝読しても感じ方はまるきり違っていました…。自分の見る目がないのだろう…もう少し時間をかけてゆっくりと見ていこう…と思います。本当にご紹介を有り難う御座いました。面白い写真が満載です。お風邪との事、ご自愛下さい。

mb 09-06-19 (Fri) 19:47

hiroさん、早速のコメント、ありがとうございました。
ご心配頂き、ありがとうございます。おかげさまで、この時間になって、だいぶん和らいだ気がします。週末には治っていることでしょう。
下巻の巻末にある松山巌さんの文章を読まれたのですね。森山さんと荒木さんの談話記事が引用されていましたね。元になった文章は、『宮本常一 写真・日記集成』の附録に所収の談話記事なんです。私ごときが言うことではありませんが、森山さんにせよ、荒木さんにせよ、宮本の写真に対する形容があまりに腑に落ちて心が震えました(そのあたりのことは、「続 過去を訪ねる」という記事に書いていました。詳細はこちらです↓)。

http://memoranda.egoism.jp/blog/2007/01/%E7%B6%9A-%E9%81%8E%E5%8E%BB%E3%82%92%E8%A8%AA%E3%81%AD%E3%82%8B%E3%80%82.html

大半の写真がPen Sで撮られたという事実も、何かしら心躍らせるものがあります。もちろん、宮本がいまの時代を生きていれば、嬉々としてデジタルを使ったでしょうが、「Pen Sでここまで撮れる」ことを知ってしまうと、やはり機械じゃないんだなぁ…..と(笑)。

さて、天の邪鬼の私としては、ここまで宮本の写真が知れ渡り、売れて行くことに一種の危惧を覚えます。なんだか、本人の意志に反して切り売りされていくような…..しかも、宮本の仕事は決して懐古的なものではなく、高度経済成長下にあった農村を訪ね、その新たなありようを試行錯誤し続けていたはずなのです。その意味で、宮本の写真は間違いなく写された時の「現在」です。

宮本の写真に向き合う時、私自身の中に湧いてくる「懐古」の文脈を、いちど綺麗さっぱり切り離さなければならないと感じています。

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