Home > 思惟 > 年始の客(2)。

年始の客(2)。

  • April 17th, 2009 (Fri) 21:29
  • 思惟

2007Eiheiji028.jpg

不意の来訪を喜びつつも、私は少し身構えていました。いずれ、ふたりのうちのどちらかから「年貢を納めることにしました(あるいは「納めさせることにしました」)」という口上が飛び出すに違いないと思ったからです。こういうとき、驚いたフリをすべきものなのか、それとも「想定の範囲内」の笑顔を見せるべきなのか、にわかに判断できませんでした(苦笑)。

そうした緊張を抱えたまま、素知らぬ顔で「核心」の周りをグルグル動き続けることが、私は滅法苦手です。つまり、頼まれもしない緊張を自ら勝手に仕込むクセに、その緊張に対する耐性は限りなくゼロに等しいのです。一刻も早くその緊張から解放されたい…..そんな手前勝手な思いが「相手もきっと言い出したいに違いない」と決めつけてしまうまで、ホンのひとまたぎの距離なのです。

「で、いつ結婚すんのよ?」。

ふと訪れた間隙に、それまでの会話の流れをまるで無視して、私は無理矢理その言葉を割り込ませました。待ってましたとばかりに答えたのは彼女の方でした。それは「ちょっと聞いて下さいよぉ、旦那!!」的なノリでした。決して口数が多いとは言えない彼の方は、いよいよ椅子の背もたれに身体を押し付け、身じろぎもせず、口をつぐんだままなのでした。しかし、眼の奥は微笑んでいました。

彼女によると、彼にはどうにも動こうとする気配が無いそうなのです。「ここまで付き合ってきたのだから、いまさら別れることは有り得ない」とは、彼が唯一発した言葉ですが、その弁明のタイミングはあまりにも早すぎました。最後に抜くべき「伝家の宝刀」を真っ先に振りかざし、敢え無くたたき落とされたも同じです。せっかくの抜き身も、彼女に「だったら、どうするのよ?!」と言わせただけでした。

そうして話頭は、昨秋結婚し、私も見知っている、彼らに共通の友人のことに及びました。その友人が如何に段取り良く、両家の諍いも乗り越えて、華燭の典を迎えたのか、そのいきさつを彼女から延々と聞かされることになったのです。圧巻は、その友人が花嫁の衣装選びにくっついて離れず、合計50着近いドレスを試着させ、ありとあらゆる角度から500枚以上の写真をデジカメで撮り、挙句にアルバムまで仕上げたという逸話でした。

その話をする彼女を前に、私は「そんなことをして欲しいのか?」という言葉を辛うじて飲み下しました。テーブルを挟んで斜向かいに座る彼と、一瞬視線が合いましたから、きっと彼もその言葉を呑み込んだのでしょう。

あとから聞かされる欠席裁判も苦痛でしょうが、いままさに眼の前で展開する出席裁判も、彼には相当に苦痛だったに違いありません(笑)。

(つづく)

2007Eiheiji027.jpg

Comments:0

Comment Form
Remember personal info

Trackbacks:0

Trackback URL for this entry
http://memoranda.egoism.jp/blog/2009/04/%e5%b9%b4%e5%a7%8b%e3%81%ae%e5%ae%a2%ef%bc%88%ef%bc%92%ef%bc%89%e3%80%82.html/trackback
Listed below are links to weblogs that reference
年始の客(2)。 from memoranda

Home > 思惟 > 年始の客(2)。

Spider
Recent Entries
Recent Comments
Archives
Categories
Now Playing
flickr Photostream
DSCF7851DSCF7849DSCF7848DSCF7846DSCF7844DSCF7840DSCF7839DSCF7853DSCF7833
TagClouds
Search
Feeds
Meta
Counter

Return to page top