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年始の客(1)。

  • April 15th, 2009 (Wed) 20:48
  • 思惟

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仕事始めの日の夜のことでした。かつて同じ職場で働いていた同僚が、恋人を伴って私のもとを訪ねてくれました。「同僚」とは言え、彼女は私より干支がひとまわり以上も年下です。勤めていたのはわずか2年間でしたが、その仕事ぶりは誠実そのものでした。送別会では誰もが彼女の転職を惜しみました。この職場の根幹に関わると言っても良い仕事を、繊細かつ緻密に、そして明るくこなしてくれていたのでした。

ある同僚など、送別会でのはなむけに、沢田研二さんの『勝手にしやがれ』を引き合いに出し、てっきり恨み節を始めるのかと思いきや、「言いたいのは「戻る気になりゃいつでもおいでよ」の方だ」と言いました。また別の同僚などは「俺、もう仕事しない!!」と断言して憚りませんでした。そのくらい、彼女は貴重な人物だったのです。

彼女の恋人もまた、この職場の後輩でした。なにゆえ彼女の方が「同僚」で、彼の方を「後輩」と呼ぶのか、そこにさほど深い意味はありません(笑)。ただ、この彼も「どんなふうに育てたら、これほど穏やかな人間が出来上がるのだろう…..?」と思わせるくらいの好人物なのでした。

その二人が年始早々、思いがけず訪ねてくれたのは、私にとってとても嬉しいことでした。訝る私に彼が差し出してくれたのは、彼の故郷の名産でした。「どうしたの?」と訊く私に、彼らが答えたその理由は「ヒマだったから」で、自宅に転がっていた土産物を適当に提げてきたとのこと。苦笑いするしかありませんでした。

近況を訊ねる私に、彼女はいろいろと話してくれました。彼女が転職せざるを得なかったのは、この職場での身分とお給料が不安定だったからです。このご時世、そうした立場にもかかわらず、誠心誠意勤めてくれたこと自体が奇跡でした。ですから彼女が安定した職業に移ることを決め、そのための勉強を始めていることを知っても、無理に引き留めることはできなかったのでした。

安定はしているが、本当にお金をもらうためだけに時間を切り売りしているようなもの。人間関係のことを考えれば、こちら(つまり、私の職場)の方が、ずっと楽しく充実していた、と彼女は言ってくれました。

無論、それは転職する以前から、彼女自身にも良く判っていたことでした。ただ、そこにつけ込んで引き留めるようなマネを、私たちの誰もできませんでした。してはならないとも思っていました。可能性のある若いうちに、自分で道を切り開くこと…..惜しむ気持ちは皆同じでしたが、その気持ちを前面に押し出して彼女と向き合うことは、誰もがためらい、心の裡に押しとどめていたのでした。

(つづく)

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