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続 続 貸切路線バス。

2008Nabari031

職場に最寄りのバス停は、始発から数えて2つ目にあります。自宅まで乗り換え無しに乗れるバスは、午後8時台に2本、9時台に1本です。嬉し涙がちょちょ切れるほど、仕事が好きで好きでしょうがない私は、たいてい、終バスかその1本前のバスで帰宅します(泣)。それを外すと、片道5kmを歩いて帰らなければならないからです。

たいてい、バスは空っぽでやってきます。そうして一段高い最後部席の右端に陣取ります。これは、他人に見られる位置よりも、他人を見る位置を好む私の習性に因るもので、決してグレているからではありません。

自家用車なら、長方形の長辺ひとつで帰れます。しかしその路線は、残る短辺2本に加えて、対角線の交点にあるJRの駅を経由して行くものですから、さながら数式のΣのような軌跡を描くことになり、通常の3倍以上の時間がかかるのです。

おまけに、幹線道路にはちっとも興味が無いらしく、ひらすら狭い旧道を走ります。そのうちのいくつかの区間には、センターラインがありません。大型の対向車が来れば,離合さえ覚束ない細い道を、ごく稀に、角のそば屋の軒先や、その傍らに立つ電柱を破壊しながら走るのです(幸い、その現場に遭遇したことはありません)。

そうして、途中の停留所で、誰かが乗ってくることもありません。路線の中間地点にJRの駅が控えているのですから、もうすこし、誰かが乗ってきても良さそうなものですが、稀に乗ってくる人(その多くは老人です)があったとしても、2駅、3駅で降りてしまうのでした。

いつもの3倍以上の時間がかかる、そんな貸切路線バスですが、不思議ともどかしさはありません。観光地にもなっている旧い橋を渡るとき、右手に見える暗い湖と、その岸辺にともる街灯を眺めていると、むしろ感傷的な気分にさえなるくらいです。

井上陽水の『夜のバス』が頭蓋の内をこだまするのは、そんなときです。ただ、矢のように走るのは、こちらのバスではなく、傍らの歩道を疾走する、ロードバイクのオジさんたちのほうですが(苦笑)。

バスに乗ると、書き物はおろか読書さえできない私は、ひたすらぼぉーっと窓の外を眺めています。そうして、その贅沢が嬉しくなります。また、これほどまでに公共の交通機関が利用されず、誰もが自家用車で行き来しているのかと思うと、温暖化も当然かぁ…..などと思ったりします。

私だけのために走ってくれる、貸切路線バス。幼い頃の私自身に、教えてあげたくなるのでした。

(了)

2008Nabari029

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