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廃業。

2008Nabari042

気が付いたとき、私は馴染みのカメラ店のなかに立ちつくしていました。薄暗い店内が、いつにも増して陰気臭い…..それもそのはずです。いつもより照明を落としているうえ、棚という棚からモノが無くなっているのです。口を開けた段ボール箱や梱包材が散乱し、足の踏み場もありません。

Yという若手の店員さんが「こんにちは」と声をかけて通り過ぎて行きました。いったい、どうしたんですか?と訝る私に、彼は寂しそうな顔をみせるだけでした。店長は?と畳みかけると、彼は顎で棚の向こうを見ろと促しました。

ふだんからきちんとした身なりのはずの店長が、首に手拭いをぶら下げて、汗だくで梱包をしています。1連4段×4連の中古カメラの陳列棚は、赤い羅紗地の布張が見えるばかりで、ほとんど品物はありません。

明らかに憮然としていました。その様子から推し量れば、敢えて訊くまでもなく、閉店に追い込まれたに違いありません。それでも私は殊更笑顔を装いながら、「改装ですよね?」と口にしていたのでした。もちろん、それが店長のカンに障ることは充分に判っていたのに……。

店長は、決して客商売向きの性質ではありません。しかし、心根は非常に穏やかで、木訥としたなかにも親身になって客と接することのできる方です。しかし、そのときの店長は、「しまいや、しまい。」と吐き捨てるように言ったきり、私のほうを見ようともしないのでした。既に「店長」で無くなった以上、私が「客」であろうはずがありません。

そんな…..、じゃ、どうなるんですか? という私の声は、つぶやきにしかなりませんでした。店長はそっと左腕を上げ、もう一方の壁を指さしました。そこは確か、レジカウンターと現像機があった場所です。その壁面に、まったく趣の異なる棚がしつらえられていて、若い女性の好みそうな雑貨が、ところ狭しと並んでいるのでした。

いったいどんな調整ミスがあったのか判りません。しかし、店じまいを待たずして、次の店用の改修工事が始まっていたのです。

整理しきれないほどの言葉が、頭の中を駆け巡っていました。唯一と言っても良い、中古カメラの充実した店がこの土地から消えてしまう……、フィルムを手に入れることさえ難しくなる…….、通りすがりの赤の他人以上に「他人」となってしまった店長のこと、にもかかわらず、50代半ばの彼の将来と、その再就職はどうなるのか…….、「金融危機が実態経済に与える影響」とは、こんな形で現れることだったのか、等々……。

「そんな馬鹿なことがあるものか!」と、 そう思った瞬間に眼が覚めたのでした。

何故、そんな夢を見てしまったのでしょう。実は職場の帰りにちょくちょく立ち寄っていた個人経営の本屋さんが、つい先頃、廃業の葉書を寄越してきたのです。おそらく、その葉書が記憶の中に潜り込み、そう遠くない将来に起こるであろう「フィルムの消滅」への恐怖心と結びついて、私にこんな夢を見させたのだろうと思うのです。

なんとも後味の悪い夢です。バクにでも食べてもらいたいくらいです。

2008Nabari053

Comments:2

hiro 08-11-28 (Fri) 19:52

ああ…びっくりした…。臨場感あふれていました。

mb 08-11-28 (Fri) 23:07

hiroさん、こんばんは。
自分の夢でありながら、驚いたのは私も同じなのです。これほど真に迫った夢は、ここ数年にはありませんでした(苦笑)。
ただ、本屋さんの廃業は本当のことなのです。旧くからある書店なのですが……。

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