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赤錆びた光景(5)。

2007Yskn057

ライトボックスに照らし出された、6コマ×7段のネガシート……初心者を虜にする、鮮やかな透過光……ルーペの先に透かし見える、凝固した時間の現実世界…..。「ひょっとして、写真が巧くなったのではないか?」という「錯覚」に、いともたやすく陥っていました(苦笑)。

リバーサルの世界に、私はすっかり魅了されました。それだけに、わざわざ一コマを取り出して紙に焼くことの必要は、どこを探しても見当たらなかったのです。3本パックのAGFA Precisa100を買い込んで、ひたすらこのフィルムで撮り続けました。

しかし、そんな錯覚から解き放たれるのに、さほど時間はかかりませんでした。当時、未だフィルムスキャナは持っていなかったのですが、必要に迫られて(たとえば義父母に子どもの近況報告がてら、写真を同封する場合など)、2Lサイズの紙焼きをオーダーすることがありました。

すると、ライトボックスで透かし見たときの感動が、褪めることこそあれ、それ以上に膨らむことは、決して無かったのでした。ほどなく、反射光と透過光の違いであるらしきことを知りました。透過光によるハレーションが、適度に情報を欠落させ、そしてその欠落を、まったく私の都合の良いように、脳が埋め合わせていたのでしょう。

とりわけ、雲ひとつ無い紺碧の空。その濃度は、24×36mmのプラスチックに収まっている限り、どこまでも濃密で鮮やかです。しかし紙に転写された途端、その濃度はあっという間に薄まって、淡く朧気になるのでした。そしてなにより、人物の肌。せっかく透過光が捨象したはずの、シミや雀斑や痘痕の類を、その精確な再現性ゆえに、律儀に紙上に転写してしまうのでした。

しかし、それでもPrecisaを使い続けました。錯覚から解き放たれることによって、却って腹決めができたのです。つまり、私にとって「写真」とは、決して紙に焼かれたなにかではなく、透過光で透かし見る、30数コマの幻燈のことなのだ…..と。

(つづく)

2007Yskn047

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