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『良識派』。

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先日、帰りに書店に寄り道したときのことです。特にお目当ての本はありませんでしたが、儀式のようにカメラ・写真の棚の前に立ち、新書と文庫のコーナーを徘徊していました。そして手ぶらで帰ろうとしたとき、ふと新刊コーナーに目が行って、この本を見つけたのでした。

このテの本が編まれる理由は、私には良く判りませんが、こうして商品として並ぶ以上、一定の売れ行きが見込めるのでしょう。私の関心は、唯一、その中に安部公房の作品が収められているか否か。それだけです。

中学校や高校の教科書に掲載された作品ばかりを集めたという触れ込みです。安部作品で教科書に載った作品といえば、『空飛ぶ男』か『赤い繭』くらいのはずだろうと思っていました。

手にとって目次を眺め、期待通り、そこに安部公房の名を認めました。しかし、『良識派』というそのタイトルには、まったく憶えがありませんでした。

こんな作品があったっけ……。文庫化された作品なら、ほとんどすべてを読んでいたはずの私にとって、これはとても嬉しい発見でした。心の中で小躍りしながらページを繰りました。

その本の判型で、2ページに満たない短編でした。400字詰原稿用紙に換算すれば、きっと3枚に満たないでしょう。しかし、その寓意が示唆するものは…..。ジョージ・オーウェルが膨大な紙数を費やして描いた『1984』の世界が、わずかこの2ページに、すっぽりと収まっているようでした。

許されるものなら、ここに全文を掲載したいくらいです。しかし、著作権がそれを許さないでしょう(苦笑)。安部公房全集では第9巻に所収とのことです。興味のある方は、ぜひご一読を。

しかし、なんだか可笑しいのです。初見のような気がしていましたが、おぼろげながら、以前に読んだ記憶があることを思い出しました。『砂漠の思想』の文庫版に入っていたのかな……。気になって仕方ありません。こんな具合に、私自身も忘れているところで影響を与えてくれていたのだとすれば、なんだかとても嬉しいのでした。

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(追記:やはり、以前に読んでいました。文庫版の『砂漠の思想』(講談社文芸文庫)の134ー136頁でした。『種のない話』と題する連作のエッセイのひとつのようです。)

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