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艶やかな幻覚(6)。

  • July 18th, 2008 (Fri) 22:23
  • 昔話

2007Smz007

先月末、他県への出張の帰路、実家に立ち寄りました。折良く実家が通り道だったこと、そして珍しく車での出張でしたから、ホームに入っている父方の祖母の見舞いに、両親を連れて行くことにしたのでした。絶好のお日和でしたが、おかげで、旅先を撮り歩く余裕は持てませんでした(苦笑)。

ただ、気がかりではあったのです。というのも、その2週間ほど前、祖母が体調を崩し、ホームに併設の病院に入っていると聞かされていたからでした。

幸い、微熱が続いている程度で、普通に受け答えはできるらしく、医者の見立ては「軽めの肺炎」ということでした。しかし、齢百歳近い祖母にとっては、些細なことが命取りです。

祖母に会うのは、この春以来のことでした。両親から、認知症が随分と進んでいると聞かされていました。しかし、初孫である私のことは、祖母にとっても気がかりであったらしく、折に触れ、私がどうしているのかを、母に尋ねることもあったようです。

この春に会ったとき、私のことは判っても、私がいまどこに暮らし、そして何を生業としているか、その記憶が祖母のなかから完全に欠落していることが判りました。以来、3ヶ月以上が過ぎています。私のことを気にかけてくれてはいても、果たして実際に私を見て、それが私だと判るものかどうか、自信が持てなかったのでした。

両親と3人で病室に入ったとき、祖母は薄目を開けてこちらを見ました。すこし驚いた表情になりました。しかし、父を見て、笑顔がこぼれました。母を見て、さらに表情が和みました。そうして、「ひっさ来なんだなぁ(しばらく来なかったなぁ)」と言うのでした(実際には、3日ほど前に、母は訪ねていたのですが)。

はじめのうち、私を見て、私だとは判らないようでした。母と手を繋ぎながら、私の名前を呼ぶこともありました。いま振り返っても、私のことは、とうとう認識できないままに過ぎたのではないかと思います。ただ、自分にとって頗る好意的な人間が来てくれていることは、良く判っていたようでした。

(つづく)

2007Smz057

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