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艶やかな幻覚(4)。

  • July 16th, 2008 (Wed) 20:04
  • 昔話

2007Smz036

もとより私は、知らんフリを決め込むつもりでした。部屋の主は出張中です。電気も灯さず、内側から鍵をかけています。そして、院生の研究室で預かっていた、この部屋の唯一のスペアキーは、私の手元にあるのです。寝惚け眼で起き出して、応対に出られたら、相手も驚くに決まっています。

ノックは一度きりでした。廊下から見れば、どう考えても不在なのですから、おとなしく立ち去るだろうとタカを括っていました。

ところが次の瞬間、ゆっくりと…..しかし確実に、鍵が開く音がしたのでした。その音を聞いたと思った途端、私は金縛りに遭っていました。頭を持ち上げて、ドアの方を見ようとするのですが、身体が言うことを聞いてくれないのでした。

そうして、ゆっくりとドアが開きました。否、その様子を肉眼で見ていたわけではありません。身体が感覚したことを、脳が勝手に映像化したようでした。

後ろ手にドアを閉め、近寄ってきたのは女性でした。金縛りに遭いながら、私は懸命に目を見開こうとするのですが、外から見れば、薄目に白眼を剥いただけのことだったでしょう。手足はおろか、頭を持ち上げることも叶わず、おまけにまぶたを開くことさえ、できなかったのでした。

ですから、この後に書く「光景」は、肉眼で見たものではありません。そんなことがあるのかどうか、科学的検証とやらは別として、私には皮膚感覚が脳に結んだ像としか思えない「光景」なのでした。

若い女性でした。比較的、上背があって、ふくよかです。白地に淡い花柄をあしらった、膝丈のワンピースを着ています。顔は見えませんでした。と、言うよりも、首から上が有るようには見えませんでした。足音もなく近づいて、ソファーの傍らで膝を折り、ゆっくりと私の顔をのぞき込んでいるのでした。

(つづく)

2007Smz005-1

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