Home > 文藝 > 『覇響』。

『覇響』。

2007Mi107

Pink Floydを知ったのは、安部公房の『カンガルー・ノート』でした。完成された長編としては最後の作品です。評論家や読者の評価は決して芳しくなかったようですが、私の中では最も再読回数の多い作品です。

Pink Floydに触れているのは2箇所。最初は、第2章「緑面の詩人」のp.48-49。自走式ベッドに括り付けられた主人公が、暗渠の地下運河に辿り着き、近づく小舟の櫓のきしみに、『鬱』の出だしを思い出す場面。ふたつめは、終章の「人さらい」のp.205-207。下がり目の印象的な少女が、”Echoes”に触れる場面です(頁数はいずれも新潮文庫版)。

当時、Pink Floydの何たるかなど、まるで知識の持ち合わせがありませんでした。しかし「夜、神経に逆毛が立って、眠たいのに寝られないようなとき、この曲はけっこう有効なのだ。狂気の静寂ってやつかな。」(p.205)という安部の”Ecohes”評は、当時の私にとって充分に魅力的だったのでした。

たしかに、そのとおりでした。20代半ば前後の数年間、”Echoes”は私の生活に欠かせない睡眠導入剤になっていたのでした。LPのB面すべて、23分27秒の大曲の、半分を超えたか超えないうちに、ストンと眠りに落ちるのでした。

その”Echoes”が、35年ぶりにLive演奏されたと知ったのは、今月号の『Lapita』のおかげです。

いつも訪ねる小さな書店に、厚めの付録を中に挟み、十字にゴム留めした『Lapita』が1冊ありました。映画『ALWAYS 続・三丁目の夕日』をモチーフにしたミニ万年筆が付いていたのです。

以前の”ミニ檸檬”、”ミニ赤と黒”までは律儀に付き合ったのですが、「今回はパスだな……」と思っていました。前の2本の経験から、それがどのような品質か、概ね見当が付いていたからです。

ところが、こういうときに限って、いつまでも売れ残っているのです。普通なら、ひとりで何冊も買い占めて、あとでヤフオクで売りさばく輩が居そうなものです。しかし今回は、発売日から1週間が過ぎでも、いっこうに売れる気配がないのです。

そうして昨日、棚の前に立ってみると、表紙のクリス・ペプラー氏が、いかにも「持って帰るよね?」と私に視線を送るのです。仕方がないので連れて帰ったというわけです。

附録の万年筆そのものは、以前の2本の反省からか、ずいぶん改良が加えられているようでした。それでも、「まぁ、こんなものだろう」と(笑)。そうして附録を脇に置き、頁を繰っていたとき、見慣れたGilmourの写真が目に留まったのでした。

David Gilmourの最新作、”On an Island”のツアーを収めたDVD『覇響(Remember that Night : Live at the Royal Albert Hall)』の紹介記事でした。それだけならスルーしていたのですが、中を読んでビックリ。”On an Island”の全曲演奏はもちろん、Pink Floydのナンバーがいくつも収録されていて、しかも35年ぶりに演奏された”Echoes”も入っているとのこと。

これはもう、行くしかないでしょ。ポチっとしたことは言うまでもありません。

それにしても、これはGlmourのソロ・ツアーではなく、実質的にはPink Floydだったのではないか?とさえ思えます。”The Division Bell”(1994)から、いつの間にか干支がひとまわり以上しています。ありえないことは百も承知ですが、Roger Watersも参加したニューアルバムを、期待せずにはいられないのでした。

2007Mi104

Comments:0

Comment Form
Remember personal info

Trackbacks:0

Trackback URL for this entry
http://memoranda.egoism.jp/blog/2007/12/%e3%80%8e%e8%a6%87%e9%9f%bf%e3%80%8f%e3%80%82.html/trackback
Listed below are links to weblogs that reference
『覇響』。 from memoranda

Home > 文藝 > 『覇響』。

Spider
Recent Entries
Recent Comments
Archives
Categories
Now Playing
flickr Photostream
DSCF7851DSCF7849DSCF7848DSCF7846DSCF7844DSCF7840DSCF7839DSCF7853DSCF7833
TagClouds
Search
Feeds
Meta
Counter

Return to page top