Home > 昔話 > 死に目覚めるとき(10)。

死に目覚めるとき(10)。

  • November 26th, 2007 (Mon) 18:58
  • 昔話

2007Mi072

あまりに唐突なことでした。最初は、赤ん坊の頃の「夕暮れ泣き」と同じ類かと思いました。まるで眠りにつくのを拒むように、そしてひとりぼっちで眠りに入ることを恐れるかのように、夕暮れ時に泣き始める、赤ん坊のあの様子のことです。

一緒に布団に入ったとき、彼は唐突に訊ねてきました。「おとうさんも、としをとっちゃうの?」と。虚を突かれた私は、彼の質問の真意を探る間もなく、「そうだよぉ。」と、いとも簡単に答えてしまったのでした。

すると彼は「ふぅ〜ん」と、ひときわ大きく声を出し、続けざまに「で、○ちゃん*も、としをとっちゃうの?」と訊ねました。再び私は「そうだよぉ。」と答えました(○はカミさんの名前)。

すると彼はまた「ふぅ〜ん」と答えました。私は彼が何を言いたいのかを推し量ることなく、「○○もどんどん大きくなって、おにいちゃんになって、で、おとなになるんだよぉ〜」と言いました(○○は息子の名前)。

しかし彼は私の言葉を遮るように、こう言いました。「おとうさんも、どんどん大きくなって、で、としをとって、で、おじいちゃんになって、○ちゃんもどんどんとしをとって、で、で、おばあちゃんになっちゃう?」

「そうだよぉ〜」としか答えられなかった私は、未だ彼の真意をはかりかねていました。あるいは、そこに「真意」が在ることなど、考えてもいませんでした。

「ふぅ〜ん」と答えた彼が、さらに続けて訊いてきました。「おとうさんも、おじいちゃんになって、で、○ちゃんもおばあちゃんになって、で、しんじゃう?」と。

橙色の電灯だけをともした、布団を二組み敷いてしまえば、足の踏み場もなくなってしまう、六畳一間の寝室です。カミさんは風呂に入っていて、私と子どもだけが布団の中に入っています。

はて、なんと答えたものかと、頭は一瞬、ためらったはずなのですが、そのためらいを裏切るように、私の口は「そりゃ、そうだよぉ」と即答していました。そうして気がつくと、彼は両眼いっぱいに涙を浮かべ、しゃくりあげはじめたのでした。

そのまま横になっているのが辛かったのか、彼は布団から這いだして、そこにちょこんと座りました。嗚咽はますますひどくなるのですが、にもかかわらず、「いやだよ、ぼく、ひとりになっちゃうの、いやだよ」と切れ切れに繰り返すのでした。

(つづく)

2007Mi044

*・・・特に仕付けたわけでもないのに、何故か、息子は私のことを「お父さん」と呼び、カミさんのことを、その名前に「”ちゃん”付け」で呼ぶ。そこに彼がどのようなパワーバランスを観ているのかは不明。

Comments:0

Comment Form
Remember personal info

Trackbacks:0

Trackback URL for this entry
http://memoranda.egoism.jp/blog/2007/11/%e6%ad%bb%e3%81%ab%e7%9b%ae%e8%a6%9a%e3%82%81%e3%82%8b%e3%81%a8%e3%81%8d%ef%bc%8810%ef%bc%89%e3%80%82.html/trackback
Listed below are links to weblogs that reference
死に目覚めるとき(10)。 from memoranda

Home > 昔話 > 死に目覚めるとき(10)。

Spider
Recent Entries
Recent Comments
Archives
Categories
Now Playing
flickr Photostream
DSCF7851DSCF7849DSCF7848DSCF7846DSCF7844DSCF7840DSCF7839DSCF7853DSCF7833
TagClouds
Search
Feeds
Meta
Counter

Return to page top