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死に目覚めるとき(8)。

  • November 21st, 2007 (Wed) 20:43
  • 昔話

2007Mi061

その怯えが、いつ頃、どのように遠退いていったのか、まるで憶えていません。父と話しをしたことは、確かにひとつの転機だったかもしれません。しかしそのことが、殊更に私の怯えを和らげてくれたわけでも無いのです。

誰しも同じような怯えを抱えることがあるものか、あるとすれば、何歳(いくつ)くらいで訪れるものなのか、あるいは麻疹のように、いちど罹ってしまえば免疫がつくものなのか、そのあたりのことを、まじめに考えたり、調べたりしたことも無いので、実は良く判っていないのです。

曰わく言い難いものがありますが、いまとなっては、「そのような怯えを抱える時機だったのだ」と思うばかりです。私にとっては、たまたま11歳のあの頃だった、というだけなのです。

「イメージとしての死」が、当時の私にもたらした畏れは、確たる停戦協定も結ばぬまま、何処かへいなくなってしまいました。しかし、それは「消えた」のではなく、あのときを境として、私のなかに伏流し始めたと考えた方が正確です。

よくよく考えれば、「死」に対して、事態は好転しているどころか、ますます悪化の一途を辿っているのです。年齢が上がれば上がるほど、老いは容赦なく肉体を襲い、その先には死が口を開けて待っているからです。

で、あるにもかかわらず、その後、今日に至るまで、あの当時ほど追い詰められた思いで、我が身の「死」を考えたことはありません…….と、ここでこのような文章を綴りながら、なおも「死」は、私にとって他人事のようなのです。

やはり、都合良く忘れているのです。しかしこの先、具体的な実態を伴う死の予兆が、唐突に私を襲うことがあれば、決していまのように穏やかでいられるはずがありません。そうなったとき、私はその理不尽さに憤り、怯え、しかしやがては諦めて、素直に受け容れることができるのでしょうか……。

(つづく)

2007Mi071

Comments:3

complex_cat 07-11-21 (Wed) 23:56

死のおびえもありましたが,私は自己が存在することの不可思議さへのおびえが強かったですね。
 なぜ,自分が自分だと感じて,目の前の人間と別の実体として,存在するのだろう。この意識を持つ自分に,なぜ自分がなっているのだろうか。まるで,目が覚めたら,自分が見たこともない「家」にいてびっくりするような感覚にずっと捉まっていました。その「家」とは,勿論自分自身のことです。
 両親が老いて,死が再び身近なものとして意識されるようになってしまいました。

mb 07-11-22 (Thu) 18:40

C_Cさん、コメント頂き、ありがとうございました。
「自分が「自分」であって、「他の誰か」では無いことの異和感」、とても良く判ります。以前、C_Cさんにもコメント頂き、今回の連載でも取り上げた「鏡だけを映す」という2年前の記事は、まさしくその異和感を憶えた最初のことを書き留めたものでした。
そう言えば、一時期、「レンタル家族」なるものが話題になったことがありましたね。それに触発されたわけではないのですが、私も以前、奇妙な夢を観たことがあります。その話題はいずれまた……。
(お母様の件、たいへんでしたね。無事に快方に向かっておられるとのことですが、くれぐれもお大事になさって下さい。)

mb 07-11-22 (Thu) 18:44

……と、思っていたら、とっくの昔に記事にしていました。「帯番組」という、昨年の6月末に書いた記事でした。よろしければお立ち寄り下さい。

http://memoranda.egoism.jp/blog/2006/06/post_306.html

危ない、危ない(苦笑)。

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