Home > 文藝 > 応用問題。

応用問題。

2006Octtyo093

昨日は日帰りの出張でした。朝9時に家を出て駅に直行、その後、電車に揺られて片道3時間、昼過ぎから用事に取りかかり、終わったのが午後7時前。誘われた酒宴に付き合っているうちに、予約していた特急を一本遅らせてしまい、家に戻ったのは夜中の12時前でした。

用事そのものはたいしたことではなく、さしたるプレッシャーもないままに乗り切りました。好意的な方々に囲まれて、とても楽しい仕事になりました。

私はお酒が一滴も飲めないのですが、飲み会は大好きなのです。最後まで居なければ気が済みません。ですが昨日の場合、翌日に控えていた仕事をフイにするわけには行きませんでした。残念。

さて、それはともかく、先月の片道6時間の出張に味をしめて、今回も安部公房の文庫本を持ち込みました。これから出張があるたび、あまり読み返したことのない長編に限って、持ち出すことに決めたのです。今回は『密会』でした。

最初に読んだのがいつだったか……おそらく、学生時代なのですが、当時は字面を追うのに精一杯で、敗北感だけが残りました。働かない脳を置き去りに、眼球だけが加速度的な上下動を繰り返すばかりで、ちっとも頭に入ってこなかったのです。

その後、2回ほど読み返しているはずなのですが、断片的に憶えているシーンはあっても、そこに描かれている世界を、具体的な絵として納めるには至っていませんでした。

今回も、概ね似たような敗北感を味わうことになりました。ただ、以前と大きく異なるのは、そこに描かれた病院に、具体的な場所を対応させて読み進めることができたことでした。

以前、怪我をした知り合いの見舞いに、地方の国立病院を訪れたことがあります。かつてサナトリウムだったというその場所は、正面からは想像できないくらい、ひたすら奥へ、四方八方へと、迷路の如く広がっていたのでした。

山の斜面を切り開き、無理矢理に平地を拵えて、増築に増築を重ねていました。建物の継ぎ目はどこもスロープになっていて、明らかに無理をしています。ずっと1階を歩いていたはずなのに、病室の窓から眺めてみると、元来た場所は眼下にあり、用途もしれないパイプ群が、縦横無尽に屋上を這い回っているのでした。

書いた者にとっては、これ以上ないくらい精細な描写で、その空間に壁を立て、ドアを置き、廊下を走らせ、すべてが繋がりのあるまとまりとして認識できているのでしょうが、それを再構成しようとする読者の側は、あまりに多すぎる手がかりのおかげで、かえってとりつくシマを見失うのでした。

その点で、私にとって『密会』は、これ以上ないくらいの応用問題なのでした。もちろん、今回の自己採点も、赤点付近にあることは間違いありません(笑)。

2006Octtyo082-1

Comments:0

Comment Form
Remember personal info

Trackbacks:0

Trackback URL for this entry
http://memoranda.egoism.jp/blog/2007/10/%e5%bf%9c%e7%94%a8%e5%95%8f%e9%a1%8c%e3%80%82.html/trackback
Listed below are links to weblogs that reference
応用問題。 from memoranda

Home > 文藝 > 応用問題。

Spider
Recent Entries
Recent Comments
Archives
Categories
Now Playing
flickr Photostream
DSCF7851DSCF7849DSCF7848DSCF7846DSCF7844DSCF7840DSCF7839DSCF7853DSCF7833
TagClouds
Search
Feeds
Meta
Counter

Return to page top