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続 続 読者の成長曲線。

2006Octtyo049

『石の眼』は、安部公房の作品のなかでも異色の長編です。登場人物に名前が有ることもそうですが(なによりこのことが、私をこの本から遠ざけた原因です)、奥野健男氏の巻末解説にもあるとおり、社会派推理小説の手法を用いているらしきことも、他の安部作品には無い特色です。

むろん、個人的には、決して推理小説だとは思いませんでした。正統な「推理小説」の枠から見れば、むしろ出来損ないの部類かもしれません。また、芥川の『藪の中』をなぞったような、登場人物たちの内言で進むストーリー展開も、どことなく興醒めでした。

つまり、手法を手なずけるのにしくじって、せっかくのレトリックがことごとく断片化した印象を覚えるのです。極めて緻密で具体的な描写が、幾層も抽象度をあげたなにかへと、必然の羽をえて飛翔するのが、安部作品のコアだと思っているだけに…..。

しかし、私はこの『石の眼』に不満があるのではありません。20年近くも、通読できないままに放置していたことが、逆に奇妙な愛着へと変わってしまっているのです。

そしてその愛着は、巻末解説を読み終えて、ある種の確信に至ります。この『石の眼』は、『事件の背景 ー蜂之巣城騒動記』という、安部自身のルポルタージュを下敷きにしていると言うのです。是が非でも、対にして読んでみなくてはならぬと思いました。

それはともかく、わずか3時間足らずで読み終えてしまったことは、私をおおいに当惑させました。2回の乗り継ぎの時間は、それぞれ10分程度。KIOSKの前に立って、なにか読みたいものは無いかと粘ってみましたが、結局、往路はそのままボンヤリと車窓を眺めて過ごさざるを得ませんでした。

脳の芯が冴えていたのか、居眠りする気さえ起こりませんでした。睡魔が襲ってきたのは、目的地への到着時刻30分前……。「ここで寝たらおしまいだぞ……」、そんなふうに言い聞かせ、強引に体内時計をセットして、うつらうつらとしてしまったのでした。

(つづく)

2006Octtyo051

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