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続 妙齢の女。

2006Octtyo019

私が撮りたかったのは、サラ地になった今の様子ではなく、また近い将来に現れるであろう、ありきたりな街の風景でもなく、撮り損ねた昨年までの風景だったことに気が付いたのでした。いや、もしかすると、今まで通ってきたなかで、1枚くらい、フィルムに納めていたかも…..。

…..とそんなことを、とつおいつ考えていると、思いがけず、フィルム一眼レフを首からぶらさげて独り歩く妙齢の女性が、私の前を通り過ぎて行きました。デフォルトのストラップを付け、オリジナルのソフトケースは無く、剥き出しの状態でした。タテに走る赤いラインのおかげで、一目でF3だと判りました。レンズは50mm f1.4s。フードはありませんでした。

しっかりキャップを付けていたところに、一瞬、「アクセサリーの延長?」という疑いがかすめましたが、そのヤレ具合からおそらく実用しているんだろうな、と思えました。父親もしくは祖父か、あるいは知り合いの年配者に譲り受けたのでしょう。いかにも休日の小旅行といった風情です。

思わず声をかけそうになった自分を、慌てて払いのけました。放っておけば人畜無害の中年男を、自ら進んで不審者に仕立てることもありますまい。そうこうするうちに、わずか二両編成の特急が到着し、私は後ろ、彼女は前の箱に収まったのでした。

あいにく、海側の窓際の席は、全てふさがっていました。観光客が多いらしく、山側の窓際がかろうじてひとつ、空いているだけでした。そこに潜り込み、これまであまり眼を向けることの無かった山側を、ボンヤリと眺めて過ごしました。

彼女がどこで降りたのか、それきり、判らずじまいになってしまいました。カメラばかりが網膜に焼き付いて、肝心の彼女の顔は、はるか乳白色の霧の向こう。その輪郭さえ、思い出すことが出来ません。

声をかけなかった後悔からか、今現在、地元のカメラ店に鎮座している、格安中古・美品のF3初期型(アイレベル)を思い出していました。そうして帰宅したあと、カミさんに向かって、「F3を首からぶらさげて、一緒に街を歩いてみたくありませんか?」と訊ねてみました。

その日あった出来事をもれなく披露し、何故そのような思いを抱くに至ったか、因果を含めて説得してみたのですが、問答無用に黙殺されました。

世の中には、フィルム一眼レフを首からぶらさげて街を歩き、独りで小旅行さえする女性もいるというのに、何故、私の伴侶がそのひとりでは無いのか、どうにも釈然としないのでした。

(了)

2006Octtyo016

Comments:4

complex_cat 07-09-08 (Sat) 16:58

タイトルといい,内容といい,ちょっと危ない香りが・・(笑)。無い物ねだりかな。
 私のワイフは,カメラ,気に入ればぶら下げて歩くかも知れないけど,F3は「重い」と一言で却下されそうです。彼女の友人には,AE-1とかFEとかを愛機にされている女性がおります。

mb 07-09-09 (Sun) 17:28

C_Cさん、こんにちは。

>タイトルといい,内容といい,ちょっと危ない香りが・・(笑)。無い物ねだりかな。

「能力」という言葉を使うなら、「気持ちは有っても、完全に無能力」ということになるでしょうか(笑)。

カミさんの場合、そもそもカメラを持ち歩くことに忌避感情があるようです。まるでとりつくシマがありません。なにしろ、いまは無きEMでさえ、嫌がったくらいですから(苦笑)。
それでも、子どもが大きくなって、抱える必要の無くなったいまだからこそ….とも思うのですが……。

HAYASHI 07-09-10 (Mon) 1:54

ご無沙汰しております。
このタイトル、コメントせずにはいられませんでした。
僕も三脚にハッセルを載せて夕刻の江ノ島を
撮ってる時でした。
そこに妙齢の女性が近づいて来て「ハッセルですか?」と訪ねてきました。
僕は「ハイ、そうです」と答えると「覗かせてくれませんか?」と言ってきて。
「どうぞ」と言うと覗き始めました。
その瞬間、妙齢臭と言うべきか心地よい香りが僕の鼻をかすめて来て、思わず深呼吸しそうなのを理性で何とか抑えたのを記憶してます。妙齢な女は「ありがとう御座いました」と言い残し、香りも残しその場を去りましたが
これが僕の妙齢体験でした。
妙齢はおじさんには毒です(^_^)v

mb 07-09-11 (Tue) 18:19

HAYASHIさん、こちらこそ、ご無沙汰しています。返信が遅くなってすみませんでした。
次々と次回作がめぐってきて、多忙な日々をお過ごしのようですね。
さて、なんだかタイトルで騙してしまったような罪悪感を覚えています。そのつもりはなかったのですが、期待はずれにさせてしまって、すみませんでした(苦笑)。
お話を伺って、改めて「才能」の二文字が頭をよぎります。そうして女性から声をかけられること自体が、私にはありません。せめて皆既月食くらいの頻度で訪れてくれても良さそうな…..、いやいや、その性根が問題かもしれませんね(笑)

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