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続 続 その時代。

  • August 28th, 2007 (Tue) 15:43
  • 光画

2006Octtyo003

あまりに売れすぎている何かを観るとき、いつも思い出すのは、俳優・渥美清さんと、脚本家・野沢尚さんです。結果として遺作となった寅さんシリーズの最終作、その撮影に同行取材したNHKのドキュメンタリーのおわりころ、渥美さんが聞き手に語りかける場面があります。

結果として……おそらくは生前の渥美さんの最後のインタビューになったのではないかと思います。夕暮れの迫る浜辺をバックに、寅さんの扮装のまま、柔和な表情で語る渥美さんの姿がありました。

聞き手の質問がどのようなものだったのか、忘れてしまいましたが、渥美さんは一言一言を噛み締めるように、そして「答える」というよりも、自らに言い聞かせるように、こんなことを話していました。

「寅さんが、手を振り過ぎて、いたのかな?

愛想が良すぎたのかな?

スーパーマンの撮影の時に、見てた子どもたちが、「飛べ飛べ! 早く飛べ!」って言ってた、っていうけども、スーパーマン、やっぱり二本の足で地面に立ってちゃいけないんだよね。

だから寅さんも、黙ってちゃいけないんでしょ? 24時間、手振ってなきゃ。

ご苦労さんなこったね。「飛べ飛べ!」って言われても、スーパーマン、飛べないもんね。針金で吊ってんだもんね。」

観客に役名で呼ばれることの冥利を、渥美さんは常日頃、口にしていたと言います。また「「寅さん」しか演じられなくなった」ことに、果たして渥美さんが苦悩を抱えていたのかどうか、知る由もありません。なにより監督の山田洋次さんはこのことをキッパリと否定しています。

しかし、先の言葉に込められた渥美さんの思いは、いったい、どのようなものだったのでしょう。大衆への畏れ、呪詛にも似た怒りと憤り、そしてそれらの感情を無理矢理に飲み下し、折り合いをつけ、悟りに至りたいという願い….. 柔らかな表情で淡々と語るその姿とはまるで裏腹の、複雑な感情を透かし観ずにはいられませんでした。

そしてもうひとり、脚本家の野沢尚さんです。といっても、私は野沢さんの作品をロクに知りませんし、その著書を手に取ったこともありません。

ただ、その死を伝える報道のなかで、遺作となったテレビドラマ『砦なき者』の劇中、役所広司演じるニュースキャスターの主人公に、視聴者への呪詛とも思える台詞を吐かせていたことを知り、そのことが妙に心に残っているのです。少し、引用してみます。

「私は最後の最後まで、あなたたち視聴者の正体をつかみそこなった。あなたたちは謎の存在だった。暗闇の中で標的を探し、いくら引き金を引いても命中したように思えなかった。それが私にとってテレビ30年の真実でした」。

(つづく)

2006Octtyo004

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