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記憶をなぞる。

2006Dks014-1

色褪せた一枚の写真があります。左にウルトラマン、右にスペクトルマンが並び立ち、その間に、やや緊張した面持ちの男の子が立っています。小さな両手は、二大ヒーローのサインの入った色紙を抱えています。

被写体は、他でもない30数年前の私です。また、その写真を撮った者は、尋常ならざるカメラマニアであるところの我が父です。場所は、当時暮らしていた土地で唯一の百貨店、その最上階の一角です。

父の記憶では、そのとき私を撮ったカメラは、フォトミックファインダーを乗せたNikon Fだったようです。当時、父は就職して数年が経ち、家計にも多少の余裕ができたことや、大きな仕事を終えたあとでもあったようで、勢いで購ったのだそうです。父にとって、自分で買った初めてのカメラ。もちろん、中古です。

その写真は私の手元にはなく、実家のアルバムのなかにあります。ですから、いまはこうして記憶を手繰りながら書いています。今と比べれば遥かに天井が低く、あの時代特有の薄暗さのあるフロアのことは、いまでも漠然と憶えています。

そもそも、ウルトラマンとスペクトルマンが、いくら子どものための興業とは言え、同じ舞台を踏んで良いものだったのかどうか、私には皆目見当が付きません。制作会社や放送局だって、おそらく別だったはずだろうと思います。

情けないことに、当の本人である私は、この写真を撮られたことも、ましてやショーの内容がどのようなものであったのかも、完全に忘れています。

ただ、かすかな記憶があります。社員専用通路とおぼしき廊下の突き当たりの小窓から、真昼の陽光が差し込んでいます。逆光でシルエットになったスペクトルマンとウルトラマンが、いそいそと控室に入ったまま、出てこなくなったのでした。

(つづく)

2006Dks013

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