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表現の暗黒時代。

  • March 6th, 2007 (Tue) 20:33
  • 光画

2006Nagoya021

「写真」が刻印するものが、つまるところ「撮り手の視線」や「撮られたモノ」に過ぎないのなら、写真にとって「撮り手が誰か?」という問いは、さほど大きな問題では無いような気がします。

あるいは、こだわってはいけないことかもしれません(ちなみに、ここで言う「撮られたモノ」とは、単に「被写体」のことだけではなく、それが撮られた瞬間や構図、焼付時の処理のことも含みます)。

「撮り手」の固有名詞を徹底して削ぎ落としたとき、それでもなお、その写真が訴える何かを持っているかどうか。あるいは写真の喚起するものに対して、観る者が感応しうる何かを備えているかどうか……「感動」とは、いずれ相互作用に依るのだろうと思っています。

そのことを承知しながらも、私は「撮り手」の固有名詞が持つバイアスに引きずられていけません。むしろ「長いものに巻かれたい」(苦笑)。そんな疚しさからでしょうか、高名な写真家の写真集、あるいは売れ線の新人写真家の写真集よりも、たまさか古本屋に転がっていた、名も知らぬ市井の撮り手の家族アルバムに、思わず心惹かれてしまいます。

数多ある「賞」の類は、撮り手の固有名詞を粉飾する効果はあっても、そこから新たな文化が創造されるわけでは無いかもしれません。もちろん、賞を主宰する出版社や団体は、「新たな写真文化の創造のため」と言うに決まっています。まさか「特定の出版社の景気浮揚策のため」とは、口が裂けても言えないでしょうから。

写真に限らず、多くの「表現」が、その手段を民主化してきました。つまり、その気になれば、わずかな投資で誰もが「表現」できる社会です。そう言っている私自身が、嬉々としてその末席に座っているようなものです。天に向かって唾するのも、たいがいにしなければなりません。

とは言え、そんな素人の群れのなかから、頭ひとつ抜きん出て、メジャーに認知されるという「サクセス・ストーリー」が、どうやら効率の良いビジネスモデルとして定着しつつあるようです。「あなたのブログを本にしてみませんか?」などとおだてられ、具体的に実現しそうなプランを目の前にぶら下げられれば、私だってホイホイ乗ってしまうかもしれません。

幸か不幸か、私自身はそんなふうに声をかけられたことなど、タダのいちども無いのですが、仮にこのブログを始めた当初にそんな誘い水を向けられていたら、あるいは冷静ではいられなかったかもしれません。少なくとも、悪い気はしなかったでしょう。おだてには徹底して弱いのです。

日頃足を向けている書店の一角に、私の書いたものが平積みになり、誰もが手にとってレジに並ぶ……。人の誇大妄想を刺激するのは簡単なことです。しかし、落ち着いて考えれば、書店に平積みの本を律儀に手にとって、そのままレジに並んだりしたことがあったでしょうか? 私が書店に行くときは、たいていお目当ての本は決まっていて、その他の本は無いも同然です。

経済が煽り立て、お膳立てする消費行動のストリームには、できるだけ近寄らないようにしたいものです。とは言え、そうして持ち上げられているものに対して、「つまらない」と正面切って吐き捨てる勇気もありませんし、それによって角が立つことをなにより恐れてしまうので、せいぜい「よ〜わからん」とつぶやくか、ハナから知らんフリを決め込むことにしています。

そういえば、友人の彫刻家が、こんなことを言っていました。「いまは表現の暗黒時代だ」と。それが何を意味していたのか、もう少し考えてみたいと思っています。

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Comments:2

HOKUTO 07-03-07 (Wed) 21:24

MBさん、こんばんは。
以前は拙いBLOGにコメント下さってありがとうございました。
今宵はこちらへカキコさせていただきます。
写真もさることながら、MBさんのボキャブラリーは凄いですね。
自分のを見ると恥ずかしくなりますよ^^;
MBさんの仰りたい事とズレてるかもしれないので、あえて書きませんが、表現の暗黒化って、なんか分かる気がします。

marmotbaby 07-03-07 (Wed) 22:44

HOKUTOさん、こんばんは。過分なコメントをいただき、恐縮しています(照)。
でも、本当に冗長なだけです。もうすこしコンパクトにまとめられないものかと、いつも情けなく思っているんです。時々、カミさんにも叱られます(泣)。

私も、彼が言わんとしたことを知りたくて仕方ないのでした。そのとき、いろいろ訊ねてみたのですが、「経済が文化を浸食している」、あるいは「「価値あるもの」を一義的に定義できない時代」といった単純なものでは無さそうでした。

それではいま、彼が苦悩しているかというと、意外に飄々としているのです。私などには見えない高見からこの暗黒を眺めているような、そんな風情なんです(笑)。

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