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私の限界。

Tyo2006 Mar039

いよいよ、明日の夜、10時から11時30分に『にっぽんの地方を歩く ー民俗学者 宮本常一のまなざしー』(NHK教育)が放映されます。なんだか、本当にNHKの回し者のような気分になってしまいました。

いささか気は早いですが、見逃した方のためにご案内。以前にもご紹介しましたが、宮本の遺した膨大な写真は、生地でもある山口県周防大島の「周防大島文化交流センター」にある「宮本常一データベース」で閲覧することができます(リンクは下記の通りです)。

●周防大島文化交流センター

●宮本常一データベース

一部、画像が表示されないものもあるようですし、サイズも小さいですが、宮本の視線を追体験できる貴重な場所です。興味がおありの方は、ぜひ訪ねてご覧になって下さい。

さて、前回、書き落としていたことがありました。宮本が写真をどのように撮り、使っていたのかということです。

「通過者の視点」でも取り上げた『季刊 d/SIGN』No.10(太田出版)の小特集、「宮本常一の小さなカメラと小さな風景」(76-80頁)のなかで、筆者の平嶋彰彦さんは、宮本の「写真作法」について触れています。

それによると、宮本は1カット1枚を原則としていたようです。しかし、その写真の多くは、水平線が傾き、構図は不安定。被写体の配置も悪く、露出の過不足やピンボケ、ブレボケが夥しく、「じっくり考えてカメラを構える撮影方法を死ぬまで身につけなかった」のだそうです。

他にも平嶋さんの記述で興味深いことがあります。

●宮本は、普及タイプのカメラに飽きたらず、Nikon FやLeica M型に移行するということが無かった(事実、宮本を写した写真の中で、一眼レフを手にしている写真は、ほとんど見たことがありません)。

●調査旅行のさい、カメラを忘れたり、途中で無くしたりすると、ためらうことなく最寄りの質屋で中古品を手に入れていた。

●見たことの正確で細密な記録ではなく、記憶に残すためのメモであった。したがって、名刺判か手札判の大きさにしか、写真を伸ばしたことがない。

これらを踏まえ、平嶋さんは「写真についての一風変わった考え方や方法論」をもつ「独特の写真作法」と言っています。

平嶋氏によると、こうした写真作法から選ばれた機械は、次のようなものでした。

●最も使用したのは、オリンパスペン(昭和35年12月に購入)

●ペン入手以前の一時期、アサヒフレックス(反射ピントグラス式)を使用

●69歳になる昭和51年まで、およそ17年間にわたってオリンパスペンを愛用

●最晩年にはキャノネットG-III17を使用(ハーフサイズからフルサイズに戻したのは、眼の衰えとハーフサイズ・フィルムを扱えるスライドプロジェクターが無かったから)

その他、須藤功編『写真でつづる宮本常一』 (未来社)を見ると、ミノルタのケースを首からぶらさげて歩く宮本のスナップもあったように思います(ちなみに、「ペン」とは、初代Pen、もしくはPen S2.8のようです)。

・・・・てな具合に、結局、その使用機材を気にしてしまうあたりが、どうやら、私の限界のようです(苦笑)。

Tyo2006 Mar047

Comments:7

starblog 07-02-05 (Mon) 0:46

はじめまして。
番組見ました。
実践的な民俗学者だったんですね。

写真は資料としての記録のひとつだったようですね。だから写れば特にこだわらないのでしょう。
今ならデジタルもムービーも使われることでしょう。
それにしても膨大な記録は森山氏もびっくり?

MBさんのお写真はとてもすばらしいですね。
これからも拝見させてください。

散歩道 07-02-05 (Mon) 13:34

■marmotbabyさん、
運良く時間に間に合い帰宅できましたので、風呂にも入らず見ましたよ(笑)
対馬や旧山古志村の村おこしの事、興味深く拝見しました。
時代の流れといってしまえばそれまでの事ですが、古きよき物を残し、そこに生活する人々が安心して暮せる環境と支援が確立できれば言いのでしょうね。

宮本常一にとって写真を撮る事はたんなる記録でよかったのですよね。
それより人々との対話とふれあいが大事で、生の声を聴き、自分の言葉で伝えることが主眼だったのでしょう。

ただ、時を経て記憶が記録として存在する面白さと貴重さは、写真(映像)ならではのことですね。

写真を残すことについて極論を言えば、カメラなんて何だって良いって事でしょうかね。

marmotbaby 07-02-05 (Mon) 21:01

>starblogさん
はじめまして! コメント頂き、本当にありがとうございました。ドキュメンタリー、ご覧になったんですね。事前に煽った者としては、starblogさんの感想が気がかりです(笑)。
以前、ご紹介した『宮本常一 写真・日記集成』上巻の巻末附録で、森山さんは宮本のカット数の多さに驚いています。もちろん、きちんと数えれば、森山さんの方が多いに決まっていると思うので、何故、森山さんが驚いたのかは不可解(笑)でもあるのですが、おそらく、それは数の多寡の問題では無く、そこに滲み出る「撮ることへのエネルギー」だったのかもしれませんね。
今後とも、よろしくお願い申し上げます!

>散歩道さん
なんだか無理矢理に付き合わせてしまいましたね。すみません(苦笑)。
生身の人間が生きることには、本当はとてつもない厳しさがつきまとっているのでしょうね。冷静に考えれば、過去が美しいはずがありません。しかし、「生身の身体」の身の丈に合う時間感覚を、いろんな意味で忘れてしまっている現在、かつての人々が感受できた「豊かさ」を、私たちが感得できないのは、とてつもなく不幸なことかもしれません。銀塩とデジタルの関係も、またしかり、かも。

>写真を残すことについて極論を言えば、
>カメラなんて何だって良いって事でしょうかね。

↑の上段も含めて、おっしゃるとおりだと思います。「撮る行為」の背後にある、対象との対話や触れ合いというものは、拭いがたく、顕れるものかもしれません。
また、機械について言えば、本来、そうあるべきなんでしょうね。しかし、私はどうにもその境地に立てません(苦笑)。「手になじむ」という「生理」を満たしてくれる機械でなければ、どれほど定評のある機械でも、手離れしてしまいます(泣)。
ところで、このドキュメンタリー、散歩道さんにとっては、いかがだったでしょうか? 私にとっては、期待以上でも期待通りでも期待外れでもなく、別の次元のなにかを残すものとなりました。

散歩道 07-02-06 (Tue) 11:49

■marmotbabyさん、
「忘れられた日本人」を読まずして語ることは失礼なので、
アマゾンでポチッとしました(笑)
あのドキュメンタリーが何だったのかは、それから思い返そうと思います。
「いま、眼の前の現在。」でお書きになった対馬の柚木さんの件、まったく私も同じ思いで見ていましたが、それは曲解はなく事実だと思います、むしろ制作する側の意図がそこにあったのだろうと解釈しました。

>「手になじむ」という「生理」

たしかに仰るとおりで、嗜好と言う範疇から逃れることは難しいことです。
でも、それは保持し、撮ると言う行為にのみ当てはまることで、記録された印画紙に「手になじむ機械」はあまり意味のないことの様に思えてきました。

marmotbaby 07-02-07 (Wed) 22:42

散歩道さん、返信、遅くなってすみませんでした。
なんだか、散財させてしまいましたね。すみません。でも、値段以上の収穫があると思いますよ(…..となることを願っています)。
「曲解」の件、散歩道さんも、そのようにお感じになりましたか…..。う〜ん……。誰にも悪意など無いはずですが、「現代という時代がつくる、お互いに善人の、不幸な関係」と思えてしまいますね。

宮本常一を語る、宮本常一を語る会 07-02-23 (Fri) 0:26

日本を旅した民俗学者 宮本常一。その足跡を地図に印すと忘れられた日本人が視えてくる。
宮本常一を語る会では、民俗学を柱に宮本常一の志を学び語り継ぎ、日本全国の関係団体と交流し、新たな輪を広げます。

宮本常一を語る会ブログ

宮本常一を語る会 07-05-26 (Sat) 4:27

宮本常一 生誕100年 福岡フォーラム

5月27日(日) 13:00~17:00
アクロス福岡 円形ホール

フォーラム概要
主催者あいさつ[ 代表世話人 長岡秀世 ]13:00~13:10
ドキュメンタリー鑑賞[ “学問と情熱”シリーズから ]13:13~14:00
基調講演[ “家郷の訓”と私 原ひろ子 氏 城西国際大学客員教授 お茶の水女子大学名誉教授 ]14:05~15:20
パネルディスカッション[ コーディネーター 長岡秀世 ]15:35~16:45

パネリスト
武野要子 氏 (福岡大学名誉教授)
鈴木勇次 氏 (長崎ウエスレヤン大学教授)
新山玄雄 氏(NPO周防大島郷土大学理事山口県周防大島町議会議長)
佐田尾信作 氏 (中国新聞記者)
藤井吉朗 氏 「畑と食卓を結ぶネットワーク」
照井善明 氏 (NPO日本民家再生リサイクル協会理事一級建築士)

作品展示
宮本純子[ 宮本常一名言至言書画作品 ]
瀬崎正人[ 離島里山虹彩クレヨン画作品 ]
鈴木幸雄[ 茅葺き民家油彩作品 ]

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