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いま、眼の前の現在。

Tyo2006 Mar012-1

どのみち勝ち目はないにせよ、裏番組が『THE MATRIX REVOLUTIONS』とは参りました。情けないことですが、どちらを録画するべきか、ほんの一瞬、迷ってしまったくらいです(苦笑)。

もちろん、ETV特集を録画しました。『MATRIX』はどこでも買えますが、こちらはどこにも売っていませんから。

ここで素人の番組評を披瀝するつもりはありません。ただ、すこしもったいない気がしました。宮本常一の業績を知るには、そこに割かれた時数が少なく、地域の抱える現状と課題を知るには、踏み込みがいまひとつ……。

せっかくの素材が股裂きに遭い、未消化のまま提示された心地です。しかし、これは作り手の力量のことを言ったのではありません。むしろ受け手である私の問題です。そして、その「未消化」の正体をよくよく考えてみると、それは、宮本が活躍した時代と現在との間にある、得体の知れない「断絶」への感覚ではないかと思えます。

もちろん、これは私の主観であり、読み違えです。なぜなら、この特集で取り上げられたのは、宮本の教えに返りつつ、新たな実践を探る方々の姿でしたから。間違いなく、このドキュメンタリーは、「断絶」ではなく、「継承」を描いていたのです。

そのことを承知のうえで、敢えて「断絶」を感覚せざるを得ない理由。そのことをもっとも強く感じたのは、対馬の柚木さんが、屋外で地元の小学生に製塩のことを解説するシーンでした。

寒風に震えながら、いっこうに目線の落ち着かない教師と子どもたちに対し、それでも熱く語りかける柚木さんの姿は、あまりにも対照的でした。

「じゃあ、中で。」と水を向けたのは、おそらく引率の教師だと思われますが、その調子には、いかにも「話が途切れるのを待っていた」「何もこんな寒いところで…..」という思いが滲み出ていたように思えてなりません(もちろん、私の曲解です)。

しかし、仮にあの言葉が、子どもたちの身体を気遣う立場の者から出た「配慮」であったとしても、そこで優先されたのは「暖かい室内で、自然相手の生産労働の厳しさを学ぶこと」という、なんとも倒錯した価値観です。

ことほど左様に、私たちは「いま、眼の前の現在」でしか有り得ないのだなぁ……と思わざるを得ませんでした。ひとりの人間が自分の代で出来ることなど、芥子粒ほどにも満たないにもかかわらず、そこに最大限の効率と即効性を求めるあまり、「同時代の協同」は有り得ても、「世代を繋ぐ協同」は想像しがたいものになる……。

あるいは、「同時代が共有しうるバラ色の近未来」は、他を掻き分けてでも追い求めるのに、それに付随する「次世代への負債」については、その「未必の故意」にさえ気が付かない……。

生産労働の形態が私たちに押し付ける「思考の枠組」の強靱さを思い知ります(逆に言えば、自然相手の生産労働は、世代を超えて受け継がせることを、むしろ強いていたとも言えます)。

「自分の孫の代には、あの山が棚田になり、豊かな稲が実るだろう」という「夢」は、「生物としての人間の、その身の丈に合った時間感覚」を持ち得た時代のものだったのでしょうか。

いずれにせよ、私の中で、いろんな思いが錯綜するドキュメンタリーでした。もういちど、『忘れられた日本人』『家郷の訓』(いずれも岩波文庫)を、読み返したくなりました。もちろん、その動機は、喪われたものへの郷愁などではありません。

いかんいかん、すこし筆が滑り過ぎました。

Tyo2006 Mar011

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