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過去を訪ねる。

Tyo2005Sep022

日頃、放ったらかしにしている家族への詫びも込めて、昨夕は外食に出かけました。本当に、久しぶりのことでした。あいにく、雨模様だったのですが、すこしだけ買い物にも出かけたり、そこそこに充実した日となりました。

8時前に帰宅して、テレビのスイッチを入れました。するとそこには、見憶えのある顔が……。間違いなく、民俗学者の宮本常一でした。

直観的に、「あっ、『あの人に会いたい』だ!」と判りました。以前、木村伊兵衛や安部公房を取り上げたこともある、NHK教育の10分番組です。過去のインタビュー番組からエッセンスを取り出して、その人と「なり」を紹介する番組。いつも唐突なので、見逃しているほうが多いのです。

このときも、頭の2、3分は過ぎていたかもしれません。それでも、生まれて初めて見る「動く宮本常一」に、未だ暖まらぬ部屋の中、雨に濡れたコートを脱ぐのも忘れ、そのままそこに座り込んで見入ってしまったのでした。

金科玉条や「珠玉の言葉」など、いわゆる「規範的な言葉」を目の前にぶら下げられると、反射的に、つい距離を置いてしまいます。裏返せば、そうした言葉に感化されやすい自覚があるからなのです。

しかし、このときの宮本の言葉は、そうした私の警戒心を、いとも簡単に武装解除するほどの不思議な魅力をたたえていました。なんと言うのでしょう………宮本の語り口は、どこまでも柔らかく、しかし、意志の強さを感じさせるものでした。

そうして、そのなかで語られた言葉の多くは、宮本自身から湧き上がったものではなく、むしろ、先人から預かった言葉を、丁寧に伝えている…..そんな趣にあふれていました。

たとえば、宮本が、父親から受け継いだ言葉があります。「急いではならぬ。後からゆっくり行けばよい。そうして、人の見落としたものを見よ」という言葉。

あるいは、宮本の庇護者でもあった渋沢敬三の言葉。「決して主流になってはならぬ。「主流」は大学に籍を置く研究者に任せれば良い。君には、野にあって民衆の声をとどめる記録者になって欲しい。そのためにとてつもない貧乏をさせることになるかもしれぬが、そうした記録が、いつかきっと必要になるときが来る」。

そうした先人の言葉に対して、宮本は自身の仕事を振り返り、こんなふうに語りました。「過去を訪ね、記録にとどめることは、実はこの先の、未来の民衆の幸せに繋がるのではないかと思うようになったのであります。」

(つづく)

Tyo2006 Mar005

Comments:2

H.O 07-01-30 (Tue) 16:40

とても深いお話ですね(^^
それから先日のPhotoblogs.orgのお話。僕は、変な風にお話を解釈していないのでご心配なくです。むしろお話がこんな風にできてとても嬉しかったです。ありがとうございます!(^^
お返事などお時間がある時にしてくださいね、僕もここ最近あれこれ考える事も忙しく余裕が無いのですが、写真を通して知り合えた方々とのお話は、とても大切な僕の一時です(^^

marmotbaby 07-01-30 (Tue) 19:15

H.Oさん、こんばんは。そちらは早朝でしょうか、それとも深夜でしょうか…..? いずれにしても、多忙な合間を縫ってのコメント、本当にありがとうございました。

頂いたコメントを拝読し、慌てて自分のコメントも読み返して「もしかすると、言葉足らずなところがあったかもしれない!」と恐縮しています。私も間違いなくランキングサイトのユーザーですし、これを介して様々な写真に出会うことを楽しんでいます。本当に、大切な場所のひとつですね。また、新しもの好きで、「長いものに巻かれたい性格」でもあります(笑)。
続きは、次のコメントへの返信にて…..。

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