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誤解の産物。

  • January 27th, 2007 (Sat) 18:01
  • 思惟

Tyo2006 Mar052

先週、渡米した折り、土産物の買い出しに、近郊のショッピング・モールへ同僚とともに出かけました。5年前の滞在中、頻繁に出かけていた場所なので、店の配置の概ねの見当はついていました。しかし、それでもすこしだけ、店の出入りがあったようで、いささか雰囲気が変わっていました。

「あのお店は、まだ残っているかな…..」と、気になっていたショップがありました。オリエンタルなグッズを販売しているお店です。記憶を手繰って辿り着いたその場所に、期待を裏切らず、元気に営業を続けているそのお店がありました。

ショップのショーケースには、模造刀や手裏剣の類がズラリと並んでいます。そのいずれもが「日本的には正しくない」ものばかりです。たとえば、刀身とほぼ同じ長さの柄のついた、佐々木小次郎でも手に余る巨大な模造刀。堂々と「伊賀忍者」と刻印のある手裏剣。どこからどう見ても、バットマンのロゴマークにしか見えず、殺傷能力のはなはだ疑問なサバイバル・ナイフ。

家具や調度品、衣装の類も充実しています。日本にも中国にも韓国にも台湾にも有り得ない意匠の掛け軸(ハリウッドの映画スターが描かれていたりする)。鼓を脇の下に抱え、女性特有の「しな」を作っている、なにゆえか顔がキティちゃんの博多人形。持っている道具の組合せが、てんでバラバラの七福神……。

要するに、不器用な模造品が、狭いショップの店内を埋め尽くしているのです。私たち日本人が見ただけでも、「これは違う」と思わせるものばかりですから、他のアジア諸国の人々も、同じように見えることでしょう。

ただ、ふと思います。これらの品々を「情報不足に起因する、タチの悪いバッタもん」と断ずるのは簡単なことです。しかし、よくよく考えると、これらの商品は、圧倒的な情報不足の中で、精一杯の想像力を駆使して作り上げられたミュータントではないかと。

振り返って、今回の私たちの仕事を顧みたとき、どうにも身につまされる感情を抑えることができませんでした。つまり、今回の私たちの仕事は、こうした模造品と、さして変わらないように思えたのです。

厳密で正確な語学力と、背後の社会的な文脈への理解を決定的に欠いた中で、自分たちに都合の良い解釈の果てに生みだされた私たちの仕事。しかし、その「模造品」が、向こうの人々にとって、意外となにものか喚起する力を持っていたこと……。

異文化交流の醍醐味、その一部は、誤解に基づくミュータントを再生産する試みなのかもしれません。

Tyo2005Sep0141

Comments:5

azusayumi 07-01-28 (Sun) 17:39

オリエンタルなグッズ、というところで不謹慎にも印画紙を思い浮かべてしまいました。すみません・・・
海外での人との触れあいも、認識のずれとかギャップこそが面白いんですよね。
私はいまだにアラブの人々のイメージはアラビアンナイトです:)

complex_cat 07-01-28 (Sun) 20:31

「異文化交流の醍醐味、その一部は、誤解に基づくミュータントを再生産する試みなのかもしれません。」 これは名言ですね。カレーライスやあんパン,ウスターソースもミュータントから派生したものだと思います。

ちなみに「刀身とほぼ同じ長さの柄のついた、佐々木小次郎でも手に余る巨大な模造刀」=写真がないと分かりませんが,長巻とよばれる戦場刀を模したものかもしれません。乱戦では,通常の日本刀より重たく,破壊力抜群で,有利といわれてました。
 まぁ,件の品は多分勘違いなのでしょうけど。

marmotbaby 07-01-29 (Mon) 18:17

>asusayumiさん
こんばんは。決して不謹慎ではなく、むしろ一種の禁断症状に近いモノかもしれませんね(笑)。私もいま、ほかの単語(「フィート」とか)に敏感になっています。
>私はいまだにアラブの人々のイメージはアラビアンナイトです:)

同じようなことを、日本に暮らす私たちも、海外の方に対して抱いているはずですね。でも、個人として外国の方と向き合えば、異質性よりも同質性に気付くことの方が多いかもしれません。

>C_Cさん
確かに、おっしゃるとおりですね。そのように考えれば、日本にあるものの中で「ミュータントではないモノ」を探す方が、難しいかもしれません(確か、日本に固有の楽器は大正琴ぐらいだとか言う話しを聞いたことがあります)。
あいにく、写真は撮りませんでした。ですから、検証のしようがありませんが、そんな戦場刀があるとは知りませんでした……。でも、たぶん、違うモノだと思います。いくらなんでもアレは、飾るしか能のないモノではないかと…..。

H.O 07-01-30 (Tue) 16:49

こちらもとても興味深いお話です(^^
こちら(僕は、北米ですが)側の人達から聞いた事があるのは、日本にある北米のイメージと言うか「アレ?チョットチガイマスヨ・・・」的な物も多いそうです。僕もこちらで暮らすようになり少しこちら側の人間になってきたかな・・?と感じてきましたが(笑)友人知人の写真を通して日本を見るととても面白い発見があります。
その刀ときっと同じような事って色々な国々であるんでしょうね(^^
僕は、本当にいい加減ななんちゃってカナディなんですが(^^;

marmotbaby 07-01-30 (Tue) 19:31

ありがとうございます。おっしゃるとおり、私たちが都合良く誤解している北米は、ゴマンとあるのでしょうね(笑)。

それにしても、自分の暮らしてきた土地が私たちに強いる「視線:モノの見方」ってありますよね。VFXYを眺めていて面白いのは、そうした「視線のお国柄」と出会えるからかもしれません。

ところで、お訊ねしたいことがあるのです。以前、「知りたいこと」という記事の中で、海外にお住まいの方々に、その土地の写真事情についてお訊ねしたことがあります(詳細は下記URL)。

http://memoranda.egoism.jp/blog/2006/10/post_370.html

残念ながら、反応は得られなかったのですが、未だに気になっているのです。多くの人がデジカメに群がり、フィルムや印画紙の衰退を加速させているのは、日本特有の現象なのか、それとも、世界同時進行で起きていることなのか……。

どうしても、日本の中だけにいると、情報が偏ってしまい、世界中の人々が古い機械を捨てて、デジカメに群がっている印象を覚えます。やはりカナダでも、デジカメが売れているのでしょうか、それとも、昔買ったフィルムカメラを、ボロボロになるまで使い倒す方が多いのでしょうか…..。

お時間のあるときで構いませんので、カナダの事情をお知らせいただければ幸いです。ブログの基本は「あるとき払いの催促無し」ですから、くれぐれも、お気になさいませんように。
お仕事、頑張って下さい!

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