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寝物語(3)。

  • December 14th, 2006 (Thu) 19:41
  • 昔話

2006Sdi006-1

もとより、思いつきで拵えたお話ですから、どこをどのように変形されても、いっこうに差し支えありません。そうして彼が手を加えるたび、いつの間にか、語り部と聴き手の主客が交代してしまいました。

「それで、どうなったの?」と私が水を向けるたび、彼は嬉々としてお話を創作しはじめるのです。

「エビくんからお裾分けしてもらったカメさんも、家族みんなで食べたのだが、余ったので冷蔵庫にしまった」とか、「次の日に食べようと思ったら、カチンコチンに凍っていた」とか、あらぬ方向に話が動いてしまうのでした。

それはそれなりに愉快な経験でしたが、やがて息子も私も飽きてしまい、『カニさんのパンのお話』は、いつしかフェードアウトしてしまいました。しかし、寝る前に布団にもぐってお話を聞かせるという習慣が、すっかり定着してしまい、ムリにも別のお話を探さなければならなくなったのでした。

そのとき、私がうろ覚えながらも、辛うじてディテールに踏み込んで話せたのは、『泣いた赤鬼』のお話でした。

しかし、ひとつだけ、大きな間違いをしてしまいました。最初の場面で、赤鬼は家の前に立て札をつくり、村人を歓待しようとします。しかしそれを読んだ村人は、「おびき寄せて食べるつもりではないか?」と邪推します。それに怒った赤鬼が、心ならずも村で暴れ、信用を失ってしまう….これが正しい記述です。

この場面を、私は完全に忘れていました。神社の境内で遊ぶ子どもたちを、山かげから覗いていた赤鬼が、子どもたちと遊びたい一心で、彼らの前に飛び出してしまう。子どもたちは「鬼が出たぁ〜!」とビックリして、叫び声を上げながら逃げてしまう…..なぜだか、そんなふうに記憶していたのでした。

後日、原典を知って、修正した話を子どもに聞かせたのですが、「おとうさん、それ、ちがうよ。」と抗議されてしまいました。こういう時の彼は、誰かさんに似て、かなり意固地になります。

私がどれほど、「ただしいのはこっちなんだよ」と聞かせても、テコでも動く気配がありません。仕方なく、我が家の『泣いた赤鬼』は、冒頭で村の子どもたちを脅かしてしまうことになっているのでした。

(つづく)

2006Sdi017ー1

Comments:2

246g 06-12-15 (Fri) 0:57

良い話です。marmotbabyさんのテキストいつも読み入ってしまいます。
幸せになりました。
勿論まず写真を見てから読むようにしてます。

marmotbaby 06-12-17 (Sun) 11:08

246gさん、返信、遅くなってすみませんでした。
冗長な文章を丹念に読んで下さること、感謝に堪えません。
新シリーズ、始まりましたね。艶のあるモノクロームの光景、こちらこそ、見入ってしまいます。

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