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論理の壁。

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「白だと思えば、白く見え、黒だと思えば、黒にも見える、乾ききった高速道路の舗装の上・・・・・・制限速度を十キロ越えた、約九十キロ・・・・・・扇風機の羽に、針金をつっこんだような音をたてて、エンジンが鳴り、絆創膏を引き剥がすような音をたてて、タイヤが鳴る・・・・・・

ぼくはもう、体の芯まで、とっぷりと騒音の中にひたされて、なにも聞えず、かえって静寂のなかにいるようだ・・・・・・」

安部公房の長編小説、『燃えつきた地図』(昭和42年)の一節です。私の持っている新潮文庫(昭和61年・13刷)では、183頁にあります。のちに、活字の大きくなった版では、もっと後の頁かも知れません。

「白だと思えば、白く見え、黒だと思えば、黒にも見える、乾ききった高速道路の舗装の上・・・・・・」という一節が、とくに好きです。そのまま読めば、まったく即物的な…..現実に、眼の前にある光景を、そのまま、忠実に、言葉に置き換えただけの描写です。

しかし、この一節ほど、観念的な何かを喚起する描写はありません。むろん、ここに託されているのは、「探す者が、探される者に転移する」という不条理……この小説のモチーフです。

後年、車を運転するようになり、炎天下の高速道を走るたび、例外なく、このフレーズが頭を掠め、あたかも不条理劇の一員になったかのように錯覚することがあります。

私のフォトログに、”light with shadow”という、ネイティヴが首を傾げるタイトルを付けたのは、「光と影」という二項対立ではなく、「影を携えた光」もしくは「影をはらむ光」という意味を重ねたかったからです。紆余曲折も、程度問題ですが、その動機に、この一節が在ったことは、間違いありません。

過日、ペン・スケッチ展には、モノクロレーザープリンタで出力した写真を出しました。画面上では漆黒の箇所が、打ち出すと、トナーがコッテリ焼き付き、かえって白けてしまいました。下地のケント紙の白ではなく、焼き付いたトナーが、光を反射してしまうのでした。

そのときは、さほど気にならなかったのですが、これをお手本に、デッサンをしようとした途端、「はて。」と悩んでしまいました。この、光を反射している部分…….いったい、お前は、白なのか、黒なのか…….?

昨日、まったくの偶然ですが、「デッサン」と「スケッチ」の違いを、知ることができました。「スケッチ」には、輪郭線があっても良いが、「デッサン」は、明度(濃淡)によって、輪郭を浮き出すのであり、輪郭線を描いてはならないのだそうです。

才能ある人が、感性で乗り越えてしまうことを、いちいち、ロジックに置き換えないと気が済まないのでした。この壁は、どうにも乗り越えられそうにありません(苦笑)。

2006Daisen0061

Comments:4

M.Niijima 06-10-24 (Tue) 0:58

下の、2コマ並んだ写真サイコー!

marmotbaby 06-10-24 (Tue) 22:01

あ、どもです。今度、焼くときの第1候補にします(笑)。

complex_cat 06-10-26 (Thu) 10:46

観測結果は観測者の存在に影響を受ける。
アインシュタインがたどり着いた科学的真実ですね(笑)。
 二枚並んでいる画像,思わず,立体視してしまいました。

marmotbaby 06-10-26 (Thu) 22:36

C_Cさん、こんばんは。コメント、ありがとうございました。
科学の紡いできたものは、「哲学」であり、「物語」だと思っています。これは、貶めて言うのではなく、むしろその逆です。
立体視…..期待させてすみません。ハーフサイズの安心感、ついつい、同じ被写体を2枚も撮っちゃうンです(苦笑)。

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