Home > 光画 > 『複製空間』。

『複製空間』。

Pen00002

書き割りのなかの夕暮れの街角を、うつむきかげんに、とぼとぼ歩く子どもがいます。コンクリートのブロック塀や電柱が、魚眼レンズで写したように、のしかかりそうに揺れていて、不安そうな男の子の心持ちが伝わってきます。

すると、前の方から、買い物かごを提げた女性が駆け寄って、子どもの前にしゃがみました。声は聞こえませんが、その美しい唇の動きから「どうしたの?」と、優しく話しかけているようです。

15年以上も前でしょうか。たしか、公共広告機構のCMではないかと記憶しています。私は既に大学を卒業する頃でしたが、不安と郷愁の入り交じったそのCMが好きでした。

同じような経験があるわけではありません。ただ、私自身が鍵っ子だったこともあり、不安な気持ちを押しのけるように、両親の帰宅を待ちわびていた思いに、そのCMと相通ずるものがあったのかもしれません。

『ペン スケッチ展』という、メジャー・メディアに対するゲリラ戦を率いて下さったMazKenさんから、昨日、ご自身の作品集『複製空間 昭和のカメラが目撃した未来空間』が届きました。無理を言って、サイン入りのものを送って頂いたのです。

夕暮れ色に染まったテーマパークの街並は、はるか彼方に忘却していた、私自身の記憶そのものでした。不安と好奇心を抱えながら、不意に見失った両親の姿を求めて歩き回る、さながら迷子になった少年の如き視線に溢れています。

お会いしたことはありませんが、長身と思しきMazKenさんが、おそらくは膝を折りながら、あるいは腰をかがめながら、Pen FTで撮り続けられたのではないかと思います。それはきっと、少年の目線の高さを取り戻すことを、街並がMazKenさんに求めたからではないでしょうか。

『複製空間』に収められた写真の数々を、郷愁をもって眺められることを幸運に思います。これは、ある一定の世代だけが共有できる郷愁で、今の若い方々には、いずれ「歴史のひとコマ」としか映らなくなるかもしれません。

MazKenさん、素敵な写真集を、ありがとうございました。

Pen00001

(今日の写真、MazKenさんにあやかって、久しぶりにPen S2.8で撮ったものを載せました。)

Comments:0

Comment Form
Remember personal info

Trackbacks:0

Trackback URL for this entry
http://memoranda.egoism.jp/blog/2006/03/%e3%80%8e%e8%a4%87%e8%a3%bd%e7%a9%ba%e9%96%93%e3%80%8f%e3%80%82.html/trackback
Listed below are links to weblogs that reference
『複製空間』。 from memoranda

Home > 光画 > 『複製空間』。

Spider
Recent Entries
Recent Comments
Archives
Categories
Now Playing
flickr Photostream
DSCF7851DSCF7849DSCF7848DSCF7846DSCF7844DSCF7840DSCF7839DSCF7853DSCF7833
TagClouds
Search
Feeds
Meta
Counter

Return to page top