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みおくり(1)。

  • February 20th, 2006 (Mon) 19:05
  • 昔話

Mi0089

子どもの頃、母親の仕事の関係で、母方の祖母の実家に預けられることがよくありました。こう書くと、なんとも哀れな幼少期に聞こえるかもしれませんが、事実はそうではありません。

経済的に困っていたわけではありませんでしたし、家庭も円満そのものでした。純粋に、母の仕事の都合で置いて行かれていたわけです。

私は私で、祖母と一緒に過ごせる時間がたっぷりあるわけですし、なにより目の上のたんこぶがいなくなるわけですから、何の不平があろうはずもありません。母は母で「可愛い孫を置いて行っているのだから、祖母も喜んでいるだろう」と、むしろ「親孝行の一環」のつもりで、私を預けていたようです。

ところがその晩年、病床にあった祖母が、あるとき、思いがけない言葉を口にしました。「「この子(注:私の母のこと)は自分の息子を置いてけぼりにして、いったいなにを考えとるんじゃろうか。家庭はうまく行っとるんじゃろうか」と思うとった」。笑いながら、そう言ったのです。

そんな心配を抱えていたことなど、微塵も感じたことの無かった私と母は、病床の祖母の「告白」に驚いて目を合わせ、大笑いもし、また揃って祖母に頭を下げたのでした。それはそれは、暖かく、嬉しい謝罪でした。

「喜んでくれているはずだ」と言うことさえ、私たちは思ったことはありません。何の疑いもなく、私は祖母の家に預けられ、また母親も安心して預けており、あまつさえ、それが祖母に対して親孝行になっている、そう思っていたわけです。

さすが、明治生まれの女性です。微塵もそんなそぶりを見せなかったのは、見事と言うほかありません。しかし、その祖母でさえ、晩年に、このことだけは言い置いておきたかったのでしょう。「最期に言うたな」と、父も苦笑いしていました。

この祖母のことを書き始めるとキリは無いのですが、そのなかでも、祖母がいつも私たちを見送ってくれた時のこと、それを書き綴ってみたくなったのです。

(つづく)

Mi0099

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