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繋がっているもの(2)

  • December 2nd, 2005 (Fri) 20:08
  • 思惟

Hirosaki0007

安価な人材を国外から大量に仕入れ、過酷な労働へと駆り立てた挙げ句、彼らを社会の「下層」に押しとどめ、それがいつしか牙をむく….。「圧倒的な多数派に囲まれたときの恐怖心」を語ったのは、確か中上健次だったでしょうか。

フランスの暴動に咀嚼しきれない思いを抱えたまま、2週間の出張に出かけました。滞在中、現地で何年も暮らしている友人が、ドライブがてら、現地の地域を案内してくれました。

アメリカ中西部の典型的な地方都市。彼によると、ここで「典型的」というのは「貧困層と富裕層とが確実に分断された形で街を形作っている」ということです。

市部貧困層の地域、北部の郊外型(農村と都市の中間的な)貧困地域、北東部の農村地域、南東部の郊外型富裕層の地域。3時間という少ない移動距離で、これだけの「現実」に触れることが出来ました。「仕事」上のかかわりだけでは決して触れることの無かった、アメリカの現実の一端です。

白状すると、私がいちばん親近感を覚えたのは市部貧困層、北部郊外型の貧困層の地域です。ただし、その「親近感」とは、せせこましく立ち並ぶ家並みに、私が暮らす地域を重ね合わせただけに過ぎません。

現実には、ドラッグの売人が徘徊し、幾度も強盗に遭ったというマーケットが点在しているということです。彼にそう説明されるまで、車を降りて歩くには危険な地域であるという自覚は、まるっきりありませんでした。

これらの地域は、かつて市の中でも最も活況を呈し、豊かな地域であったと言うことです。それが富裕層の郊外流出、自動車産業の衰退による人口減といった流れの中で、いつしか「低所得者層が暮らす地区」に変貌したのです。

以前、「ニュータウンの寿命」と題して、呑気なことを書き散らかしていました。しかし、いま、このことがコミュニティの変貌と社会の階層化の問題として、深刻に受け止めるべき課題のように思えてなりません。

正確に言うと、「寿命」は無いのです。できたてのニュータウンに暮らす夫婦が子育てを終え、定年を迎え、ローンも返し終わった頃、庭付き一戸建ての管理が苦しくなり、退職金を元に市街地の高層マンションに引っ越します。

経済的に余裕のある層は、新たな住環境を求めてホッピングするでしょう。そうして、かつての「ニュータウン」には空き家が増えるわけですが、減価償却され尽くした住居の新たな住人は、かつての住人よりも所得の低い人々になります。残された当初からの住人も、あまりに生活感覚の違う「隣人たち」に囲まれれば、その恐怖心を拭うためのホッピングを選択するかも知れません。

現に、かつて「文化住宅」と呼ばれ、競争率何千倍と言われた憧れの集合住宅は、独居老人と外国人労働者の住むところとなり、治安と孤独死の問題が本当に深刻なのだと聞いたことがあります(報道で取り上げられていたのは、こうした住宅に暮らす当初からの住民が、なんとかコミュニティを再生させようと尽力されている姿でした)。

「箱」としてのコミュニティの担い手が「経済」という単一の基準で離合集散を繰り返すうち、その一帯はいつしか「○○層の暮らす地区」というレッテルを貼られることになる。現実に、しかも加速度的に進行しているこの現象に、私自身、いままでなんと無頓着であったかを思い知らされます。

(つづく)

Hirosaki0008

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