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宅野の黒瓦。

いつもコメントを頂いている吾郷さんから、「宅野の黒瓦」の秘密を解く鍵を頂きました。初めて宅野を訪れて以来、気になりながらも放置していた胸の「つかえ」が降りた心持ちです(吾郷さん、本当にありがとうございました)。

山陰線を松江から西へ行かれたことのある方なら、石州の赤い屋根瓦を眼にしたことがあるはずです。山陽線で言えば、三原を過ぎて西条から八本松を抜け、瀬野に至るあたりまで、赤い西条瓦の家々が点在している様子をご覧になったことがあるでしょう。

(もちろん、石州瓦と西条瓦は違います。ただ、その色あいを思い浮かべて頂くのに、あえて引き合いに出してみました。宮本常一の『庶民の発見』(講談社学術文庫)の冒頭に、山陽線のこのあたりに触れた記述があります。「庶民のねがい」と題する小論なのですが、私のとても好きな一節です。)

話を山陰線に戻します。大田市駅を過ぎ、仁万駅に至るまでの間、いっとき、海岸べりに別れを告げ、山裾に近い方を走ります。いくつかのトンネルをくぐり抜けたあと、ほんの一瞬に行き過ぎてしまうのですが、右手に海端の小さな村が飛び込んできます。それが宅野村です。

沿線の村々の中でも、宅野だけが艶やかな黒い屋根瓦に覆われています。真夏の日射しには蒼い空と白い砂地に映えて美しく、また真冬の曇天には低く垂れこめる雲を支えるかのように重厚です。そして、宅野はどこまでも「瀟洒」と呼ぶにふさわしい、美しい村なのです。

なぜ、宅野だけが黒い屋根瓦なのか、気になりながらも知らないままに過ごしてきました。今回、吾郷さんに教えて頂いた情報のおかげで、ようやく、ひとつの解答を得ることができました。

WebPlanという島根県松江市に本社を置く会社のコラム記事、その2005年9月号に答えがありました。記事によると、江戸時代、宅野はその南に控える石見銀山と密接な関わりのある村でした。具体的には、銀山の採掘に使う鉄器を供給するため、鍛冶産業が発達していたのだとか。また、村独自で瓦を焼き、それが特徴ある黒い屋根瓦であるということです。

黒い屋根瓦の来歴に、銀山が関わっていたとは思いもよらぬことでした。しかし、よく考えてみればそれも得心の行くこと。瀟洒なだけではなく、暖かい礼節の漂う村。その由来に、銀山との関わりから育まれた豊かな文化と精神性が在ったことは間違いないことでしょう。

今回掲載した写真は、初めて宅野を訪れた2年前の冬、GR1vにTri-Xを詰めて撮影したものです。私には珍しく、モノクロームで撮影した写真です(いつもはカラーフィルムからのモノクロ化です)。私の宅野は、この写真から始まったのでした。

真夏の宅野を撮り終え、しばらくは封印しようと思っていました。しかし、冬の足音が近づくにつれ、再び、訪ねてみたくなりました。

Comments:2

mimi 05-11-01 (Tue) 23:35

こんばんわ。
興味のある話しですね。
大道さんの「TAKUNO」を見て行ってみたくなり。
memorandaさんの宅野の写真を見て益々行きたくなっていましたが、
今日の記事を読んで電車で行きたくなりましたよ。

marmotbaby 05-11-02 (Wed) 19:20

mimiさん、こんばんは。
山陰線は風情があって良いですよ。特急でも2両編成しかなく、また単線ですから、行き違いのために停車することもしばしばあります。しかし、こののんびりしたところが、なんとも言えず愛おしいのです。
電車で宅野に向かうとなれば、仁万駅が最寄り駅になります。確か、特急は仁万駅には止まりません。松江方面からですと、大田市駅から乗り換えることになるでしょう。そして仁万駅から歩くかタクシーを使うかしかありません。私自身、過去に宅野を訪れたときは、いずれも自家用車でした。電車を使うのは出張のとき。そのたび、宅野は必ず見逃すまいとしているのでした(笑)。

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