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撮りたい写真。

昨日のエントリーを書いていて、ふと、思ったことがあります。『カンガルー・ノート』を映画化してもらうとすれば、いったい、誰が良いだろう….。

と言いつつ、私自身に映画の知識は皆無です。なにしろ、ここ数年、映画館に足を運んだこともありませんし、レンタルビデオの会員証だって、とっくの昔に期限が切れてしまっています。

なけなしの知識を絞り出せば、やはり鈴木清順かなぁ….。『ツィゴイネルワイゼン』や『陽炎座』のことを考えると、いちばんふさわしい気がします。

『ツィゴイネルワイゼン』の原作が、内田百間(本当は「門」に「月」)の『サラサーテの盤』だというのは有名ですが、むしろ「原作」と言うのにふさわしいのは『山高帽子』の方かなぁ…..。

もっそも、そんな「解説」を講釈するために、今日のエントリーを書いたのではなかったのでした。

安部公房の作品には、私が撮りたいと思う光景はいくつもあります。昨日の『カンガルー・ノート』で言えば、最後の場面に登場する、深夜の廃駅の構内でしょうか。他にも、『燃えつきた地図』の、高速道路を疾走する場面や、『薄明の彷徨』のコロイド状の空とか。

もちろん、小説の「映像化」が、時として陳腐極まりないこともあります。また、漱石の小説世界を写真で探訪する雑誌記事などがあると、そのあまりにありふれた写真の数々に辟易することもあります。

頭の中で夢想する光景が、どんな写真にも撮りきれないことは判っているつもりです。そして、その代わりに、現実の写真が喚起せずにはおかないイメージが多々あることも….。

……そんな連想から、昨夜、寝しなに、「撮りたい写真」「撮りたかった写真」、あるいは「撮り損ねた写真」をいろいろと連想していました。珍しく、寝付きが悪かったことが理由です。ただ、その連想の中で、いまは頭の中にしかない、懐かしく感傷的な光景のいくつかが、浮かんでは消えて行きました。たとえば….

・冴え冴えとした月明かりに濡れている、町家の黒い屋根瓦の連なり

・月光が差し込んで来る、実家の縁側と、それを蚊帳越しに見ている自分

・祖父と祖母に挟まれて寝転がりながら見上げていた、橙色の電球

・バスターミナルで私を見送りながら手を振り続ける祖母

・幼い頃、幾度となく歩いた道

・その先の、どうしても思い出せないカーブの向こう

・高速道路のトンネル。ナトリウムランプに照らされたオレンジ色の車内

・宅地造成のために、頻繁に家の前を行き来するダンプカー

・夜、寂れた大衆食堂の片隅で食事をする、母親とその2人の子どもたち

・時ならぬ夕立に煙る、アスファルトの道

・雨上がりの風にそよぐ青々とした稲

・轍(わだち)のある泥道の水溜まり、そこに遊ぶアメンボたち

……間違いなく、その多くが、子どもの頃に見た光景です。おまけに、お世辞にも「明るい光景」とは言えないものばかり。

ただ、弁解すると、決して「後ろ向き」のつもりは無いんです。むしろ、私にとっては、至って「前向き」と言うか……(笑)。

Comments:3

mimi 05-08-07 (Sun) 18:34

はじめまして。
雨上がりの水溜りの写真は僕もいつも撮りたいなぁって思っています。
子供の頃の雨上がりの一番の遊び場でした。
自転車に乗るようになって、一気に突っ切るのも楽しかったです。
最近は、水が溜まるような道も探さないと見つからないです。

あの水溜りのアメンボーはどこから来て、どこへ行ったのでしょうね。
今でも不思議です。

complex_cat 05-08-08 (Mon) 6:08

私の写真師匠である方が,商用イメージ写真をずっと撮って来られた方ですが,それに対しては,全く今は興味がないということで,その方にとって写真とは,少年期に見た情景を再イメージ化する作業に他ならないと言い切っておられました。
 あげられていた情景は,そのものだと思います。是非,イメージ化をお願いします。

marmotbaby 05-08-08 (Mon) 18:08

>mimiさん
はじめまして。コメント、ありがとうございました。返信が遅くなってすみませんでした。

>子供の頃の雨上がりの一番の遊び場でした。
>自転車に乗るようになって、一気に突っ切るのも楽しかったです。

はい。私もまったく同じ遊びをしていました。水溜まりが深ければ深いほど加速が必要でしたよね。また、どれだけ加速がついていても、泥に埋まり込んでしまえば、たいてい真ん中で立ち往生してしまう….。また、当時の子どもの自転車は、両足スタンドでした。なので、わざわざ水溜まりの真ん中に後輪を浸し、その状態で漕ぐことによって、跳ね上がる水の多さを競争したこともあります。
なんだか、当時の情景をリアルに思い出すことができました。懐かしい(笑)。
うちの子は、現在4歳ですが、雨上がりの時は好んで水溜まりを歩きたがります。そのたびに「コラ!」と言ってしまい、後悔してしまいます。アスファルトの水溜まりでバチャバチャ動き回ることくらい、当時の私に比べれば可愛いもんなんですが…..。
実はmONOCHROMe、Shigさん経由で、ちょくちょくお邪魔していました。LeicaとHasselをお使いなんですね。しかもご自分で現像・焼付までなさるとか…..クオリティの高さに尻込みしていました。これを機会に、今後ともよろしくお願い申し上げます(BlogPeopleにリンクを張らせて頂きました。事後報告、お赦し下さい)。

>C_Cさん、こんばんは。
「撮り損ねた写真」という言葉自体は、森山さんの『犬の記憶』(河出文庫)にあったように思います。良い言葉だなぁ….と思っていました。未だ森山さんを知る以前から、言葉にならないながらも、同じ衝動を抱いていました。
箇条書きにしたことは、あくまで私のイメージの中にあることで、そこを狙って行くと、ことごとく外れてしまいそうです(笑)。ですから、私の撮る写真も、「永遠の近似値」で良いかなぁ….などと思ったりしています。

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