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震える少年。

  • June 21st, 2005 (Tue) 19:03
  • 思惟

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夏の暑さに冬を想う、無いものねだりの私です。「このまま秋が来るのでは…?」 そんな冗談も、一時は本当に思えるほどの低温でしたが、やはり夏は来たようです。

12月16日。数年前のこの日、私は初めて沖縄に向かいました。カミさんと一緒になる、その了解を得るためでした。機外へ降りたとき、革のハーフコートが、手荷物以外の何物でもないことを思い知りました。

当時は、未だ改築前の那覇空港でした。狭いターミナルの人の往来に、暖かいものを感じられる空港でした。出口では、先着していたカミさんと義父母が出迎えてくれました。義父母に会うのは初めてでしたから、当然の如く、私は緊張していました。

そのまま、車に乗せられ、向かった先は『峠の茶屋』と言うところでした。露出する岩肌の海岸べりに、うまい具合に客席のしつらえてある、風情のある喫茶店でした。差し込む西日がとてもまぶしく、本土では考えられない暑さだったことを憶えています。

そのまま、南部を数カ所、観光しました。結婚のことを口に出すタイミングを完全に見失い、にもかかわらず、狭い車内(義父が運転、助手席は私)で2時間ほど過ごした後、家に着いたのは、夜にさしかかる頃でした。

家に着いて、義父母を前に私が何を話し、どのようなやりとりがあったかは省略しますが(記憶も完全に欠落しています)、こちらが拍子抜けするほど、あっさり了解が得られたのは確かです。

その夜、親戚一同を集めた酒席を設けることになっていました。レストランの一室を借りた簡素なものでしたが、数名の親戚に集まってもらい、私をお披露目するのだと言うことでした。その中には、カミさんの祖父も含まれていました。

沖縄戦で過酷な日々を過ごし、それだけならまだしも「「旧日本軍に荷担していたのではないか」という自責の念が、長く祖父を苦しめていた」とカミさんから聞いていました。「良いお爺ちゃんだけど、どこか斜に構えている人」というのが、カミさんの寸評でした。

ところが、私から見た印象は、なんとも言えない穏やかな方でした。柔らかい微笑みと穏やかな口調、小躯ながらも骨太の腕….カミさんの評価は、どこか根本的に間違っているのではないか。そう感じていました。

結婚の了解も得られ、めでたい席までもうけて頂いたとは言え、親戚一同に包囲された私の緊張は、とどまるところを知りません。うっかりすると、「はじめまして。「馬の骨」です。」と口走りそうになるくらいでした。それをほぐしてくれたものの中に、祖父の微笑があったことは間違いありません。

時間も経ち、ひとりひとりと顔合わせをする段になりました。祖父の前に座ったとき、他に適当な話題も見つけられなかった私は、つい、沖縄戦のことを訊ねてしまったのでした。

祖父は、にこやかに応対してくれました。前後の文脈は忘れましたが、捕虜収容所に入っていたときのことを話してくれました。祖父は「大変でしたけどねぇ、まぁ良かったですよ….アメリカ兵が格好良くて、それに意外と親切でねぇ….日本の兵隊より良かったかもしれません」

まるで、おととい出会った、通りすがりの親切な人のことでも話すかのように、なんのてらいもなく、さらりと話すのです。そこに「皮肉」など欠片も無いことは、祖父の話しぶりから明らかでした。

しかし、「日本の兵隊より良かったかもしれない」という印象は、祖父の実体験に由来する、生身の言葉にちがいありませんでした。本土から来た私に向けられたものではなかったにせよ、その夜のホテルの一室で、幾度も反芻せざるを得ない何かがあったのでした。

(つづく)

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Comments:2

complex_cat 05-06-22 (Wed) 17:50

また,続き物,とても楽しみにしております。私も沖縄には友人がおり,当時,いまでもですが,ウチナーの人の深い優しさにこちらがいい気になって分からなかったことが,後からこの年になって分かったり,若気の至り,ガキだったので許してもらえたのだなと思い返すことが沢山あります。
 実は,アーティクルとは関係ないので,不躾で誠に失礼なのですが,ミュージカル・バトンなるものが知人から廻ってきました。
(参考)http://d.hatena.ne.jp/keyword/Musical%20Baton
ブログらしいちょっとユニークな企画かなと思いまして,バトンをお受けすることにしました。
で,5人別の方にバトンを回そう云うことも私の意志なのですが,つきましては,どうかバトンをお受け頂きたくお願い申し上げます。不幸の手紙とかとか,もちろん無関係で,あっさりお断り頂いても大丈夫です(笑)。また,そこで,バトンの分岐を終わらせることも受けた側で選択できます。海外からのものですので,もの凄く分岐しておりますから,その枝を或る方の意志で終わらせるのも一つの解法です。
ご検討頂きたくよろしくお願い申し上げます。

marmotbaby 05-06-22 (Wed) 19:16

C_Cさん、こんばんは。
Music Baton、喜んでお受け致します。実は、その存在は知っていて、指を加えて眺めていたかも知れません(照)。ですので、バトンを回して頂けたこと、とても嬉しく、またホッとしているのが正直なところです。直裁に言えば、「あぁ、blogの末席に居られたんだぁ…. 」という、素直な感動です。はは。
ただ、問題は、5人もの方にリレーできそうに無いことです(泣)。私にとっておもだった方には、すでにバトンが回っているようですから….。別に方法を考えるつもりですが、その点はご容赦下さい。
「チェイン・メール」という概念がある以上、その類似物として扱われて拒否反応を示す場合もあるようですが、別物として考えられると良いですね。

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[...] カミさんの実家を初めて訪ねた折りの様子は、以前に「震える少年」という記事(こちら)に書いていました。いまから4年近くも前の記事でした。危うく、同じコトを繰り返して書く [...]

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