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往診。

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「往診」という習慣は無くなってしまったのでしょうか? 並べて書くのは適切ではありませんが、私のなかで「往診」は、「ちり紙交換」と「くみとり」にならぶ、すぐれて日本的な光景でした。

子どもの頃、病気と言えば、きまって往診のお世話になりました。熱にうなされながらも、我が家に他人が上がり込むことに緊張を覚え、しかし、この人が自分を楽にしてくれるのだという期待がありました。白衣から漂う独特の匂いと聴診器のひんやりした感触。嬉しさと情けなさが綯い交ぜになった心地でした。

当時、私のかかりつけのお医者さんは、商売っ気がまったく無く、「温厚」が白衣を着て歩いているような方でした。小児科の専門医であったかどうかは憶えていませんが、怪我にせよ病気にせよ、なにかあるとその先生のお世話になっていました。

その当時、我が家には車が無く、往診の後、処方された薬を受け取りに、父が自転車で行き来してくれたものです。甘いくせに妙に不味い、紫色した液体でした。自転車のブレーキの音を心待ちにし、そうして薬を手に帰ってくる父をみて、幾度と無く頼もしく思ったものでした。病気をしたことさえ、いまでは懐かしい思い出です。

私自身が息子を持ち、彼が風邪をひいたりすると、いつもこの光景を思い出します。そして「往診」という習慣が無いことに、すこしだけ寂しさを憶えます。苦しいときにムリヤリ車に乗せられ、診察まで順番待ちをしている光景を、いったい彼はどんなふうに記憶するのだろうと思います。

油断していたわけではないのですが、子どもの風邪がぶり返してしまいました。これで心おきなく、GWを穏やかに過ごせそうです。好天に煽られて散財するよりも、家族の物語を紡ぐには良い機会かもしれません。いや、決して負け惜しみではなく(笑)。

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Comments:5

Shig 05-05-03 (Tue) 19:30

こんばんは
marmotbabyさんの記事で私も本当に久々に「往診」の記憶がよみがえりました。まったくおっしゃるとおりです。すでに子供ではない私も、今では具合が悪くなると無理して車を出し、病院に行き、最低1時間以上は待たされ、そのくせ診察は5分くらい・・・。大人の私でもさらに具合が悪くなる今のシステム、まだ幼い子供ならどんなに苦しいか。たいそうな病気ならやはり病院で精密検査も必要でしょう。でも普通の風邪くらいなら今更ながら往診というしくみがいかにすばらしいか再認識してしまいます。
私の幼少の頃の風邪の思い出といえば近所の町医者さんの往診と母がいつも作ってくれる「すりおろしリンゴ」でしょうか。
子供さん、早く元気になられるといいですね。

complex_cat 05-05-03 (Tue) 20:45

往診は,その消失過程において,かなり地域差があったと思います。私の少年期,私の住んでいた地域では,既に消滅していました。NHKなどの昭和初期のドラマだけの世界でかいま見るだけで,一度もその恩恵にあずかったことはありませんでした。グッタリした自分を両親のどちらかがタクシーか何かで運んでいる想い出だけです。
 かかりつけの小児科は,予約を入れて,その時間に連れて行くと,まぁ最悪でも20分程度まつぐらいで,症状が酷いと判断された場合は,予約も順繰りに早く入れて貰えるようになります。土日,夜8時まで開業していて,それが何よりもありがたいです。その医院のお陰で,小児科だけは助かっておりますが,いつものもの凄い患者さんの数です。さばくのも大変で,お医者さんが倒れるのではないかと心配することしばしです。うがった見方をすれば,少子化で,小児科のサービスは向上して,地域によっては,往診というサービスも復活するのではないかと思っております。

かわっち 05-05-03 (Tue) 23:47

初めまして。
うちの地方は往診残ってますよ。
でも老人の多いところなのでお子さんの往診はなさそうです…
完全に往診が消滅ってことは、しばらくなさそうですけど
小児科自体も少ないですし、なんとかして欲しいですよね。

marmotbaby 05-05-04 (Wed) 15:00

>Shigさん
「すりおろしリンゴ」! やはり、どこの家庭もそうですよねぇ!
子ども時代の病気の記憶って、一種独特のものがありますね。いま振り返ると、あれくらい安心して無防備でいられることは、大人になると有り得ないのかも。そう考えると、あの当時の光景が懐かしく思えたりします。
「往診」という仕組み、当時は「社会的な必要」(車が充分に普及していない、とか)から生まれた「慣習」のようなものだったとすれば、それをこれから「制度」にしていくのは大変かもしれませんね。でも、Shigさんも仰るように、素晴らしいシステムだと思うのです。

>C_Cさん
そうですか、やはり地域差が大きいんですね。C_Cさんの幼い頃には無かったとか…..。実は私も何度かタクシーで運ばれた憶えはあります。だから未だにタクシーって、どこか苦手なんですよねぇ…。あまり良い思い出が無いというか…..。
テレビドラマにあって我が家に無かったものといえば「氷嚢」でしょうか。氷枕はあるのに、なぜ氷嚢が無いのか、病気になるたびに「氷嚢」をしてみたいなぁ….と思ったものです。
いまのかかりつけのお医者さんは非常に良心的で、休日や昼夜を問わず対応して下さるので、非常にありがたいのです。小児科をめぐる厳しい状況を素人ながら知っているだけに、この献身的な対応には、いくらお仕事とは言え、本当に頭が下がる思いです。

>かわっちさん
はじめまして。これからもよろしくお願いします。
そうですか、やはり地域のニーズによっては往診があるんですね。この地域でも、私が知らないだけで、案外、あるところにはあるのかもしれません。
しかし、やはりニーズの多寡が対応の仕方を決めてしまう現実には、薄ら寒いものを感じますね。

>みなさま
おかげさまで、今日はかなり持ち直しており、熱も平熱に下がっているようです。ただ、いくぶん高めですし、前回のこともありますから、養生するに越したことはありません。ただ、エネルギーが有り余っているのか、どうにもじっとしてくれなくて…。

COMPLEX CAT 05-05-05 (Thu) 14:51

Nurse cat

昨日,蟹採りで張り切りすぎたのか,長男が熱を出しました。
彼が熱を出すと,大抵,下の部屋で私と一緒に寝るのですが,なぜか,そうなると絶対にチコはわざわざ二階の…

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