Home > 音楽 > 理知的な狂気。

理知的な狂気。

Crop0013-1

最近、CDを買っても、ライナーノーツを「熟読」することが無くなりました。「大人買い」の悪弊が身に付いてからは、なおいっそう、この傾向に拍車がかかっています。

以前は一字一句を食い入るように読んだものですが、いまではハナから斜め読みです。挙句、「批評家なんぞに自分の感性を誘導されたくないのだ」と、屁理屈だけは一人前です。白状すれば、加齢に伴う記憶力の低下を自覚したく無いだけかもしれません。

しかし、おかげで歴史的背景や作曲家、演奏者といった文脈を離れ、曲そのものと向き合えるような気がします。「大河の流れを思わせる云々」という解説ならば、「雄大な河」をイメージしなければなりません。「A演奏家よりも、B演奏家のプレイの方が繊細かつダイナミックで云々」とあれば、B演奏家のプレイに軍配を挙げなければ嘘になります。いわば、そうした「消費社会的束縛」から解放されたということです。

「理知的な狂気」とは、ショスタコーヴィッチの交響曲第5番『革命』から思い浮かんだフレーズです。この曲、20年以上前に公開された邦画で知りました。興行的にも成功したとは言えず、高く評価されたという話も聞きませんが、私の中では最高の映画です(主人公を演じた俳優が、削げた頬にするために、奥歯・・・たぶん「親知らず」だと思います・・・を4本も抜いた、という逸話で有名です)。

80年代にNHK-FMで放送された、エフゲーニ・スヴェトラーノフ指揮のライブ録音が、私の中でベストの演奏です。残念なことにCD化されていないようです。同じ指揮者とオーケストラによるCDもあるのですが、何かが違うんですよね…..。

昨日のエントリーを書いているうち、J.S.Bachの音楽も「ある意味「理知的な狂気」ではないか?」と思うようになりました。「崇高」と言うだけでは形容しきれない「毒」のようなもの….。なにより「対位法」という言葉自体が、ミラーハウスの鏡に映る自分を想起させます。規則的な乱反射が引き起こす眩暈と、その果てにある自家中毒。

私たちが聴いているのは、「調和した旋律」などではなく、実はJ.S.Bachの「理知的な狂気」なのかもしれません。それはとりもなおさず、Bachの「脳」を聴いていることなります。Gouldが魅入られたのは、そんな「狂気」だったのかもしれませんね。

Image55

Comments:4

complex_cat 05-04-23 (Sat) 22:12

ショスタコの5番って,私がクラシックを聴くようになった頃のきっかけともなった曲です。確か小林研一郎+チェコフィルだったかのFMソースでした。他には,ムラビン+レニングラードの体力オケのものしか知りません。まぁ最後まで素人っぽい聴き方で終始したので,シンフォニーとPコンが中心というものでしたが。ロック小僧だった私もプログレの長大な大曲を聴いていたわけで,クラシックが楽しめるように「前適応」していたことに気がついたのです。深いことは分かりませんが,青春交響曲から,夜の歌,トゥーランガリーラまで,楽しめるようになったのは人生において得をした気分です。そうそう,バックで焚き火をしているようなノイズだらけのクナの名盤なども,そののちホントにそれのプロデュースを手がけることになった同級生から聴かせて貰いました。嗜むぐらいには聴けるようになったのは,全く持って友人のありがたさですね。
 ライナーノーツは云われてみれば熟読しなくなりましたね。今は,アイルランドものに填って長いのですが,ほとんど斜め読み。過去,ブリティッシュロックやプログレなど,生き字引足らんと頭に詰め込んだ頃がまるでウソのようです。お陰でブログのカテゴリに,無謀にも音楽分野を入れ込んでいるのですが,記憶力の問題もあって,アーティクル制作のための情報整理も遅々として進まず,ほとんど書いておりません,というか書けないと云うことに気がついたのでした。

marmotbaby 05-04-25 (Mon) 19:00

C_Cさん、お帰りなさい。体調、まだ万全では無いようですね。くれぐれもご自愛下さい。
そうですか、C_Cさんもプログレですか! 私はPink Floydしか知らないのですが(それも、”最新アルバム”『The Division Bell』から聴き始めたクチです)、学生時代は入眠を誘う必須アイテムでした。とくにechoes。
仰るように、かつて、あれほど吸い取り紙のように吸収していた頭が、いまではまったく別物のようです。記憶力の低下をタチの悪い詭弁で糊塗しているようで、ときどき、嫌になることがあります(泣)。

M.Niijima 05-11-10 (Thu) 1:27

marmotobabyさん、こんばんは。バッハの音楽を「理知的な狂気」としたこのエントリー、たいへん興味深いです。あの交織の世界は仰るとおり狂気なのかもしれませんね。そして「規則的な乱反射」はとくにフーガ曲において顕著なような気がします。
そのような感性で音楽を聴いていらっしゃるmarmotobabyさんから「狂気の幾何学」と僕の写真にお言葉をいただいたことはたいへん光栄です。

ところでショスタコーヴィッチの第5ですが、僕のベストはバーンスタイン指揮、ニューヨークフィルによる1979年東京文化会館でのライブ盤。有名な盤なので聴かれたことがあるかもしれませんね。あの終楽章は狂気だと思います。

marmotbaby 05-11-10 (Thu) 21:01

M.Niijimaさん、貴重な情報をありがとうございました。
バーンスティン指揮のもの、たぶん、持っていないと思います。今度、探してみます。
とくにクラシックの場合、どうしても最初に触れたCD(あるいはラジオ)が唯一無二のものになってしまいます(笑)。素人にありがちなパターンというか….。ホンとに、それほど詳しいわけじゃないんです(照)。

Comment Form
Remember personal info

Trackbacks:0

Trackback URL for this entry
http://memoranda.egoism.jp/blog/2005/04/%e7%90%86%e7%9f%a5%e7%9a%84%e3%81%aa%e7%8b%82%e6%b0%97%e3%80%82.html/trackback
Listed below are links to weblogs that reference
理知的な狂気。 from memoranda

Home > 音楽 > 理知的な狂気。

Spider
Recent Entries
Recent Comments
Archives
Categories
Now Playing
flickr Photostream
DSCF7851DSCF7849DSCF7848DSCF7846DSCF7844DSCF7840DSCF7839DSCF7853DSCF7833
TagClouds
Search
Feeds
Meta
Counter

Return to page top